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第十二話 季節外れの新入部員その二
男子テニス部での騒動から数日後のことだった。
バトルファック部の俺に後輩ができた。
季節外れの新入部員が現れたのだ。
「く、黒崎です……宜しくおねがいします!」
つややかな髪をポニテールにして、ペコリと頭を下げている。
細身ながらスタイルは抜群だった。
(どうして黒崎さんが!?)
見覚えがあるどころか肌を重ねた相手が、部長であるミズホに紹介されながら目の前で恥ずかしそうに立っていた。
あの小部屋でのことを思い出すとゾッとする。
副部長が助太刀してくれなかったらおそらく敗北していた相手。
もしも彼女の誘惑に屈していたら……
俺はこうしてまともに顔を見ることもできなかっただろう。
彼女は初々しい表情で部員のみんなに頭を下げている。
最後の俺の目の前に来て頭を下げたので、二人にしか聞こえない声量で尋ねた。
「スパイだった黒崎さんがどうして……」
「任務を失敗した私に帰る場所なんてないから。それに」
うつむいたまま彼女が答える。
「……リッカ先輩にイヤっていうほどわからせられたから」
「わからせ、な、なんだって?」
顔を上げた彼女は僅かに頬を紅潮させて悔しげに俺をにらみつける。
「とにかく大井先輩にはリベンジしますからね!」
「ひいっ!!」
美少女が泣きそうな顔で歯を食いしばってる様子はなかなかそそられるが、自分に向けた敵意が混じっていると慣れば話は別だ。
黒崎さんの内に秘めた気迫だけは、対峙したあの時と同じだった。
次の日、テニス部で筋トレをしている最中にミズホから呼び出しを受けた。
バトルファック部のことなのでテニス部の顧問も配慮してくれた。
駆け足で部室へ入ると、ミズホの他に黒崎さんと副部長が俺を迎えてくれた。
そして四人揃って修練場へと向かう。
「フィードバック演習?」
ミズホからそう告げられた。
実戦で使った技を修練場で部員相手に試すことで技術の定着を促す意味があるらしい。
「何故俺が?」
「ミナトくんは初めてでしょう」
「そりゃそうだけど」
「あの日、リッカが黒崎さんにトドメを刺したのは覚えてる?」
「ああ……」
にわかに不安を感じた。女が三人、男が一人。
そして黒崎さんはあからさまに落ち着かない様子だ。
「まさか俺を実験台に!?」
「違うよ、そんなんじゃないよ! ただ、ね……」
「ただ?」
「適当な男子がみんな今日はお休みだから♪
というわけでリッカ、ミナトくんを抑えて」
「御意」
「なっ!? 待てよ副部長、黒崎さんもなんとか言ってくれ!」
だが俺の意思は完全にスルーされ、副部長が俺の背中を抱きしめてきた。
抵抗しようともがいたが無駄だった。
背中から回された彼女の指が俺の乳首を刺激しつつ、舌先で首筋を舐めてきたのだ。
力を込めて振りほどこうとしても瞬時に無力化されてしまう。
「うわぁ……」
「リッカの脱力蹂躙羽交い締めは相変わらず鮮やかだね!」
黒崎さんが感嘆の声を上げ、ミズホはその横でウンウンと頷いている。
「大井くん、じっとしてて。既にわたしの固め技は決まってるから」
バストを押し当てられながら妖しく囁かれて背筋がゾクゾクしてしまう。
しかも本当に外せない!
見えない鎖で繋がれたみたいにリッカから逃げられないのだ。
これがバトルファック……まさに柔よく剛を制すといった性技だ。
快感を味わってる間に俺の下半身は完全に露出させられてしまう。
そして脚の間に黒崎さんが体を割り込ませてきた。
「じゃあ打ち合わせどおりに受けた技を披露して見せて」
「はい。でもいいんですか?」
「何が?」
リッカに命じられた黒崎さんが戸惑っている。
それに打ち合わせの内容が気になるぞ!
「か、彼を……大井先輩を気絶させちゃうかもしれません」
「やれるものならやってごらんなさい。彼の守備力は部長のお墨付きよ」
戸惑う彼女に副部長が告げる。
「き、北川部長のっ!!」
「そうよ。だから先日のバトルはあなたもかなり手こずったんじゃないの?」
「なるほど。では……黒崎風花、全力で参ります!」
黒崎さんは表情を引き締め、俺を上目遣いでにらみつける。
既に俺は副部長のせいで全身の力が半分くらいにさせられている。
今も彼女の指が俺の乳首を撫でながら首筋や腹筋も刺激され続けているのだ。
この状態でまともに性技を受けきるなんて現実的ではない!
「黒崎さんから何をされても耐え続けて! それがミナトくんの役目だよ」
「や、やってみる……」
ミズホから励まされ、俺は渋々決意を固めた。
(2021.01.31更新)
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