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十四話



 冷静に現状を分析する。体勢は圧倒的に俺が有利。
 三十秒限定とはいえこのアドバンテージは大きい。

(ええい、余計なことは考えるな!)

 チャンスを無駄にしている場合じゃない。
 細かいことはリッカに肉棒を突き刺してから考えればいい。
 その時の俺はそう考えていたのだが、

ずぷ、ぷ……

 手触りの良いリッカの尻肉を鷲掴みにしながら腰を突き出す。
 あっさりとペニスが突き刺さる……と思ったのも束の間、

「うっ……あっ!? ああああああああああーーーーーッ」
「くすっ、バァ~カ♪」

 妙にすんなりと俺を受け入れた時点で気づくべきだった。
 俺を待ち受けていたのは残酷なほど心地よい肉襞の槍衾。
 瞬時に俺のカリ首を肉の輪が締め付ける。

「来るとわかっている以上、対策を取るのは当たり前でしょ」

 俺の方を振り返りもせず彼女は笑う。
 たまらず正面を向く。
 鏡の中で俺を見つめるリッカの視線と目があった。

(そうか、見てないわけじゃなくて……逆だ、ずっと見られていたんだ!)

 不意に恥ずかしさがこみ上げてきて、それがすぐにペニスへと伝わり俺はますます敏感になった。
 心と体の両方から余裕が消えていく。
 自分から責めておいて思い切りカウンター攻撃を食らった形だ。

「やっぱりまだまだ可愛いね、大井くん」

 リッカは両肘をマットに付いたまま腰を軽くひねった。
 その円運動がお尻と太腿に伝わり、内部で囚えられている俺自身へ響く。

(う、ううっ、この膣内でチンコが溶けちまいそうだ……)

 そして仕上げに軽い前後ピストン。
 彼女から俺の腰を数回打ち付けてきた。
 たったこれだけの動きなのに、見事に脱力させられてしまう。

「さっきわたしに煽られた大井くんは逃げる選択肢を自分から捨てたの」
「!?」

 彼女の言葉にハッと息を呑む。
 たしかにそうだ。

 限られた時間の中で自分に有利な責めをすることしか考えられなくなってしまった。
 ここでも駆け引きが重要だったのだ。

「焦ったあなたは確実に寝バックでの責めを選択する。あとは地力の問題ね」
「地力……」
「フフフ、今のあなたはまだわたしには敵わない」

 それに来るとわかっている刺激ならある程度は耐えきれると副部長は言う。
 ただしそのある程度がどれほどなのか俺にはわからない。
 未熟な俺のバック責めならば余裕だと言いたいのだろう。

 愕然とする俺を鏡の中で見つめながら彼女が再び腰を動かす。
 ゆらゆらと上下左右に揺らされると俺の口からため息が出た。
 さっきよりも明確に快感が植え付けられていく。
 膣内で吸い付かれたペニスは彼女の動きに追従して快感を貪るように円を描く。

「動きづらいでしょ。気持ちいいから動けない。くすっ、あははははは!」

 組み敷かれながらも不敵な笑みを浮かべるリッカ。
 彼女はもはや時計を見ていない。

(俺が先攻めできる三十秒が過ぎてもお構いなしということか……くそっ!)

 その余裕を崩せないことに悔しさを感じるが、俺の下半身はすでに操られているかのようにリッカの動きに従順だった。

「あまりにも読みどおりに動いてくれるんだもん。
 素直すぎるのも悩ましいものね。新人クン♪」

 快感と悔しさを同時に味わわされている。
 たしかに俺はバトルファッカーとして素直すぎるだろう。
 ある意味それは仕方のないことだ。
 セックスにおいて今までそんな駆け引きを考えたことなどなかったのだから。

(あああ! こ、このあとどうすれば……う、くっ……!)

 半分パニックになりかけた頭で思考する。
 問題は今現在だ。
 この窮地をどう切り抜けるか。

(ここは一旦抜いて体勢を整えて――)

 戦略的撤退。仕切り直しが必要だ。
 だが腰を引こうとする俺の動きを察知したリッカが美脚を動かした。

「まあ、当然そうくるわよね」

ギュ……

「え……あっ!!」

 まさにあっという間の出来事だった。

 彼女の長い脚が伸びて俺を拘束する。
 柔らかなふくらはぎが俺の臀部をギュッと抱きしめてきた。

 そのまま踵で腰をロックされる。

(あ、ああっ! さっきよりも深い……!!)

 脱力した俺では振りほどけない抑え込みは、
 まるで「逆だいしゅきホールド」みたいな技だった。

「逃さないわよ。このまま果てなさい」

 亀頭が彼女の膣口とキスしているように熱い。
 思わず四つん這いになってしまうと、俺の手首を彼女の手がギュッと掴む。

「一緒に気持ちよくなろ? 大井くん」

 見え見えの甘ったるい誘惑。
 それでも今の俺には効果てきめんだった。

(やば、なんだこれ……気持ちがふわふわする……)

 動けなくなった俺をリードするようにリッカはグイグイと力強く腰を引き寄せた。
 彼女手動で強制的にピストン運動をさせられる。
 一往復ごとに膣内で擦られたペニスからゾワゾワと快感が伝わってくる。

(ぐっ! 締め付けがさらに強まって)

 押し込まれる一瞬は緩くなり、一番奥ではキュっと締め付けられる。
 その行為を何度も繰り返される。これを意図的に行っているならばリッカの膣内は男殺しの名器と言って間違いない。

「早く降参しちゃいなさい? フフフ」

 ちらりと振り返ったリッカを見る。
 もはや自分の勝利が揺るがないと確信している表情だった。

 射精寸前で、俺の心に火がついた。

(負けるなんてイヤだ! 逃げちゃダメだ、ここは押し通す!!)

 このまま射精するしかない現状を打ち破る。
 そのために俺はタイミングを合わせて腰を打ち付けた。
 リッカの踵で腰を引き寄せられる時、自分の体重を思い切りかけた結果、

「ひゃんっ!」

 ほんの少しだけ深くペニスが突き刺さり、予定外の刺激が彼女に襲いかかった。
 リッカの口から甲高い声がこぼれ、美しい背中がビクッと跳ね上がる。

(や、やったか?)

 手応えはあった。
 確実に一矢報いた、と思った。
 そしてあわよくばこのまま逆転できるのではないかという期待まで持たされた。

 だがそれも一瞬で終わる。

「ふぅ、生意気!」

 数秒経たずに冷静さを取り乱したリッカが不機嫌そうに振り返り、今までで一番の強さでペニス全体を締め付けてきた。

「ぐああああああああああああっ!!」

 その強烈な締め付けはすぐに引いていった。
 さらに彼女に掴まれていた手首と腰の戒めが解けた。

(こ、これはチャンスなのに、なんで俺、動けないんだ……!?)

 俺の体が動かない。
 動かす意思が手足に伝わらないのだ。

 ゲームで言うならスタン状態だ。
 リッカがその隙を見逃すはずもなく、体勢が入れ替えられた。

 騎乗位。
 見上げる彼女は美しかった。

「少し本気を出してあげるわ。性技・二段絞首刑!」

 リッカは一度舌なめずりをしてから下腹部に力を込めた。

ギュ、ウウゥゥ!!

「うああああああああああーーーーっ!!」

 根本が締め上げられ、次に先端が同じ強さで絞られる。

 カリ首から上が甘噛みされたみたいになり、続いて根本も同じく刺激される。

「根本はこのまま固定してっと……」

 リッカは締め付けはそのままに上下の動きを加えてきた。
 締め付けの位置が微妙にずれる。
 それでも交互にキュンキュン締められる。

(なんだよこれ、ずっと締められて、舐められて、今度こそ溶けちまう!!)

 いつしか俺は彼女の背中にすがりついていた。
 声も出さずに悶絶するしかなかった。

「楽になりたかったらさっさと降参することね」
「ああああ、ああーーーーーーーーっ!!」

 ブルブル震えながら俺は歯を食いしばろうとした。
 しかし快感に震えた筋肉が言うことを聞かなかった。

「もう言えそうにないか。じゃあトドメね。飛ばしてあげる」

 俺を射精させるためリッカが腰を浮かせた。根本と奥の両方を同時に締め付けながら無理やりペニスが抜ける直前まで位置を調整して、

「ふふっ、さよなら」

 思い切り腰を落としてきた。

ズッチュウウウウウウウウウウウ!!

 先端が再び膣口をくぐる。その時点でキツキツになっている彼女によってペニスの皮がめくられ、敏感になったまま膣内を通過。さらに、

「あああっ、あ……ンウウウウウゥゥゥ――!?」

 最奥に到達した瞬間、亀頭が思い切り抱きしめられた。
 同時にリッカに唇を奪われる。

ジュプッ、ジュルル、ジュルンッ!

(きもちい、きもひい、きもちいいよおおおおぉぉぉ!!)

 悶える俺の顔を抱いて抑え込む美しい手のひら。

 無抵抗な口内を蹂躙するリッカの舌先。

 同時に膣内でいたぶられるペニスとの相乗効果で、俺の許容量を軽くオーバーした快感が容赦なく流し込まれた。

 リッカに抱かれたまま何度も派手に射精したあと、ようやく俺を解放した彼女は満足そうに言った。

「最後はあっけなかったけど、途中は悪くなかったわ。
 大井くんの前戯がしっかりしていたら、わたしも危なかったかも」

 麗しの副部長がすっと立ち上がり俺に背を向けた。
 どうやら彼女は全く疲れていないようだ。

(力を吸い取られたみたいだ。情けない……でも……)

 おぼろげな意識の中で彼女の言葉を反芻する。
 一方的にいたぶられただけにしかみえないバトル内容だったけど、もしかしてこれは褒められたのだろうか。



(2021.02.25 更新部分)




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