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十六話  密かに苦悩する副部長




side - リッカ -


 部長とともに謝罪し、彼の許しを得てホッとした。
 わたしは先程のバトルを振り返る。


――正直、危なかった。あんなに思い切りよく挿入してくるなんて。


 わたしは事前に北川部長から聞かされていたので、ちょっと強引かなと思いつつ大井くんに稽古をつけることになった。日々の鍛錬は大切だ。

 それがフィードバック研修後の抜き打ちバトルファック。
 やるまでは正直楽勝だと思っていたけど、意外と苦戦してしまった。

 序盤、マット上で自分からうつ伏せになり彼を誘った。
 計算どおり彼は戸惑って警戒した。
 慎重なのは悪いことじゃないけどね。

「じゃ、じゃあ責めさせてもらいます!」
「くるのね。でもいいの? あっさり負けちゃうかもよ」
「っ!」

 大井くんの性格から考えて、わたしの言葉で躊躇するだろうという読みは当たったけれど、そのあとの判断が早かった。ううん、早すぎた。

ずぷ、ぷ……

 自分から三十秒間のハンデを申し出ておきながらわたしは焦った。
 相変わらず技工はない。でもペニスの硬さが尋常じゃない!

(ちょ、なにこれ! 熱くて、硬い……まさか一気に?)

 そのまさかを彼は行った。わたしは顔色を変えずに居るのが精一杯。
 脱童貞から一週間くらいしか経ってないくせにこの子、思い切りが良すぎる。

 だから少しだけズルをさせてもらった。

クキュ……ッ!

「うっ……あっ!? ああああああああああーーーーーッ」

 背中に響く彼の喘ぎ声。
 これは当たり前。
 だってこっちは技を使っているのだから。

 無造作に突っ込んできたペニスを迎撃するための護身術。
 挿入と同時にカリを締め付け、少しだけ緩めてから膣奥でなぶる性技・二段絞りを格下男子に使うことになるなんて。

「くすっ、バァ~カ♪」

 心地よい挿入感に悶えている彼を煽る言葉も忘れない。
 ちらりと振り返れば悔しげな表情の彼が見えた。
 これでバトルの主導権は掌握できた。

「来るとわかっている以上、対策を取るのは当たり前でしょ」

 そう言いながら今度は自分を落ち着かせる。
 正面にある姿見に映る彼は明らかに狼狽していた。

 今までの経験上、こういう状況になると男子はとにかく焦る。
 具体的には勝負を早く決めようとしてがむしゃらにピストンしてくるのだけど、彼はどうするだろうか。興味深い。

 そして鏡の中の彼と一瞬目があった。だがすぐに視線をそらされた。

(あんっ、まだ一段と硬くなった……気づかれたかな?)

 わたしに深く挿入したまま彼は動かない。
 大チャンスなのに。
 おそらくこれは快感のせいで動けないのだろう。

 それなら追い打ちをかけておきますか。


「やっぱりまだまだ可愛いね、大井くん」

 わたしが不敵に放つ一言。これだけで十分効果が期待できる。
 余裕たっぷりの女性に対して今の彼では対応できない。

(やっぱり動けない、か。じゃあわたしから動いちゃうね♪)

 心にゆとりができた。自分から腰を振ってみる。

 ゆっくりと前後左右に嬌声ピストン。
 彼が小さくうめいた。

 そのままのリズムで左右に8の字を描いてみる。
 押し殺したような声とため息がわたしの背中で聞こえた。

(うんうん、効いてるみたいだね。もっと追い詰めてあげる)

 少し思い切って後方に腰を突き出し、彼との結合を深める。
 膣奥で包み込むようにペニスを締め上げ、開放する行為を繰り返す。
 腰を突き出したまま彼は動かない。

 迎え腰を受け、わずかに喘ぎ声を漏らすだけなのは驚嘆に値する。
 やはりフィジカルが違いすぎる。
 このまま育てば一流のバトルファッカーになると感じる。

 でもそのためには心も強くならなきゃね。


「さっきわたしに煽られた大井くんは逃げる選択肢を自分から捨てたの」
「!?」

 快感を耐えるのに精一杯な彼に残酷な言葉を投げかける。
 ふふっ、もうパニックだよね? でもまだ終わらないよ……

「焦ったあなたは確実に寝バックでの責めを選択する。あとは地力の問題ね」
「地力……」
「フフフ、今のあなたはまだわたしには敵わない」

 一生懸命我慢してるのに、おちんちん硬くして自分から女の子を支配してるつもりなのに全然効いてないとわかっちゃえば悔しいよね?

 考える暇を与えず押し切ってあげる。
 私はさっきと同じように腰を左右に振ってペニスを揉みくちゃにする。
 すでに熱くとろけた膣内でしゃぶり回してあげれば、にわか仕込みの対抗策なんて霧散しちゃうでしょ。

 ずっと息を殺したまま目をギュッと瞑っている彼に優しく声をかける。

「動きづらいでしょ。気持ちいいから動けない。くすっ、あははははは!」

「あまりにも読みどおりに動いてくれるんだもん。素直すぎるのも悩ましいものね。新人クン♪」

 わたしの言葉で大井くんは快感と悔しさを同時に味わっているに違いない。
 彼はバトルファッカーとして素直すぎる。
 その証拠に、女を喜ばせるような悔しげな表情がたまらなく可愛い。
 もっと虐めてあげたくなってしまう。

 この辺りからわたしは平常心を失っていた。
 先輩として彼を導くことより、自らの享楽を優先させていたと思う。

 苦し紛れに腰を引いて寝バックの体位から脱出しようとした彼の動きを邪魔する。


「まあ、当然そうくるわよね」

ギュ……

「え……あっ!!」

 私の脚で腰を引くことを封じられた彼は悶えるしかない。


「逃さないわよ。このまま果てなさい」

 わたしの言葉でまた彼は震える。
 引き寄せた亀頭が膣口とディープキスしているみたいで熱い。
 溶けるような快感に抗えず、四つん這いになってしまった彼の手首をギュッと掴む。

「一緒に気持ちよくなろ? 大井くん」

 私の背中にピッタリ張り付いた彼に向かってささやく。

 あ、またおちんちんが硬くなったけど……これはもうイく直前ね?


「早く降参しちゃいなさい? フフフ」

 ろくに今まで駆け引きなんて考えたこともないであろう彼に対して無慈悲な言葉を投げかけ、言葉と裏腹に優しい愛撫で彼を惑わせた。

 その時、少しだけ可愛らしい反撃があり、私の子宮が疼いた。
 もう射精寸前のはずなのに頑張って腰を打ち付けてきたのだ。

 あまりにもささやかな抵抗に、わたしはもう我慢できなかった。
 握っていた彼の手首を離して体位変換。

 ここからは騎乗位で責めてあげるわ。

「少し本気を出してあげるわ。性技・二段絞首刑!」

 下腹部に力を込め、彼を快楽でがんじがらめにするイメージをした。
 膣内の二箇所を強烈に締め付けて刺激を断続的に送り込む。


「根本はこのまま固定してっと……」

 膣の締め付けはそのままに上下の動きを加えてみる。
 これによって締め付けの位置が微妙にずれる。

 当然のように悶える彼。

 気持ちよくてたまらないでしょ? もっと叫んでいいよ、ふふっ♪


「楽になりたかったらさっさと降参することね」
「ああああ、ああーーーーーーーーっ!!」

 ブルブル震えながら彼は歯を食いしばろうとしてるけど、快感でゆるんだ筋肉が言うことを聞かないみたい。

(もうすぐかわいくイっちゃいそうだね♪)

 ああもう、できればこのまま大井くんを虜にしてしまいたい!
 でも彼は部長のお気に入りだからそれはできないし……

 そう思いながらクールに私は彼に引導を渡すことにした。


「もう言えそうにないか。じゃあトドメね。飛ばしてあげる」

 彼を気持ちよく射精させるため、わたしは腰を浮かせた。
 根本と奥の両方を同時に締め付けながら無理やりペニスが抜ける直前まで引き抜き、彼の悔しさを煽るように告げる。

「ふふっ、さよなら」

 思い切り腰を下ろした直後、彼は爆ぜた。
 わたしの膣内で何度も白濁を吹き上げガクガクと腰を揺らしながら。


「あああっ、あ……ンウウウウウゥゥゥ――!?」

 そしてわたしもただでは済まなかった。
 ペニスが最奥に到達した瞬間、無意識に思い切り抱きしめてしまった。

 おちんちんだけじゃなく、彼の唇も奪いながら。

ジュプッ、ジュルル、ジュルンッ!

 夢中になって彼にキスをした。
 そうしなければ私も声を上げていたと思う。

 やがて数分間のキスを終え、
 落ち着きを取り戻した私は彼に向かってつぶやく。


「最後はあっけなかったけど、途中は悪くなかったわ。
 大井くんの前戯がしっかりしていたら、わたしも危なかったかも」

 言い終わってすぐにわたしは背を向けた。
 そのままシャワー室へと向かう。

 歩きながら即座に反省した。

 先輩として圧倒的に勝つつもりだった。
 それなのに、彼に夢中になってしまった自分に気づいてしまった。

 シャワーを浴びながら、わたしはそんな自分の未熟さを恥じた。



(密かに苦悩する副部長  了)



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