第二章 第五話
シフォンに解放された後も、俺は暫く身動きひとつできなかった。
本当に軽い口づけだった。
だからといって生身の人間にとって優しいわけではない。
(最後のキス、あれが、効きまくってる……く、くそおぉぉ!)
彼女のキスはとても気持ちが乗っていて、志穂が本気でキスしてきたら同じように目眩がしてしまうのではないかと思えるほど濃密だった。
それ以上に、最初の浅乃さん……じゃない、ルルカの必殺技のキスが甘すぎて、今でも余韻が残っているのだ。
二人のサキュバスから熱い口づけを受け、射精まで味わった直後なのだ。
立ち上がれなくて当然とも言える。
手足に痺れが残ったままの俺に三人目の、最後の淫魔が身を寄せてきた。
「えへへ、やっとあたしの番だ♪」
「なっ、今度はお前かよ結菜!」
「……結菜じゃない」
ニヤリと微笑むその顔つきはたしかに妹のものではなかった。
「リンネ・ナハトっていいます。よろしくね、ユウマ」
大の字になったまま震える俺を、真上から見下ろしながら彼女が言う。
リンネはゆっくりと両膝を俺の脇腹あたりについてから、そのまま腹の上にぺたんと座り込む。
まだ敏感なままのペニスの先端が、柔らかなお尻の肉に押しつぶされて悲鳴をあげる。
どこからどう見ても結菜だ。髪の色が違うことを除けば、本人にしか見えない。
だけど今までの流れで、彼女は完全に別人だ。そうなると話が違ってくる。
「うっ、ううぅぅ……こんなに似てるのに、結菜じゃないのか……!」
「んぅー? もしかして、こう呼ばれたいのかな」
するとリンネは人差し指を唇に当ててから、上半身を倒して顔を寄せてきた。
甘いコロンの香りがする……。
彼女は両肘で俺の肩を抑えるようにしながら、手のひらで顔の向きを調整する。
すべすべした手だ。軽く顔を撫でられるだけで俺は恍惚感いっぱいにされてしまうのだが、
ぺろぉ♪ はむっ、ぺろぺろぺろぺろ……
「ひゃあああっ! あっ、ああ、まっ……!!」
「らめぇ、はむ、はむ、ちゅっちゅっちゅううう♪」
突然左の耳を舐められ、声を上げてしまった。
ゾワゾワした耳への愛撫に耐えきれなかったのだ。
そしてヒクついたままの俺の顔を抱きしめるようにしながら、リンネが囁いてきた。
「敏感なのね。お・に・い・ちゃん♪」
「んあああっ!」
ビクビクビクッ!
自分でもわかるほど、ペニスが狂おしく震えた……妹そっくりのビジュアルで、妹じゃないサキュバスのたった一言に心が溶かされたのだ。
「あははっ、わかりやすーい!」
「あ、あああぁぁ、なんだよ、今の……」
「あのね、リンネは別人だから安心していいんだよ」
「っ!!」
彼女の言葉は核心をついていた。別人であることがキーワードなのかもしれない。
俺は常日頃から結菜に性的にいじられることはあれど、最後の一線だけは超えてはいけないと胸に刻んでいた。
確かに結菜は可愛い妹だし、なついてくれてるのも嬉しい。でも妹なんだ。
兄である俺が汚すようなことをしちゃいけない、という無意識のストッパーがある。
しかし……、
「ユウマの可愛い妹、結菜ちゃんとは別人だから……わかるでしょ?」
俺の上半身を抱いたままでリンネが言う。
そして彼女に密着されると、必然的にあの破壊的な胸が俺を愛撫するわけで……
むにゅうう、ふにゅ、ふにゅんっ♪
「あ、あああ、まって、それヤバい……おっぱい、おっぱいがあああ!」
「うんうん、そうだね。おっぱい、ドロドロにしていいんだよ。その他に何でも、望むことがあれば教えてね」
俺に感触を刻みつけながら彼女は続ける。
「結菜はね、おっぱいが大きいことがコンプレックスなんだってさ。知ってた?」
「そんなの、しら……はうううっ! リ、リンネ……はぁ、はぁ、はぁ……」
俺が答えようとすると、リンネは快感を与えて邪魔をしてくる。
しかも俺が喘ぐ度に嬉しそうに胸を擦りつけてくるのだ。
とんでもない確信犯だ……しかもこの胸は、俺が大好きな――、
「ねえ、あっちの世界じゃ倫理が邪魔してできなかったこと、全部あたしがシテあげる♪」
「……え?」
チュッ……♪
気が抜けた俺に、リンネは唇を重ねてきた。
シフォンのキスや、ルルカとか違う……一番性的なキスだった。
「本当はもっと甘えたかったんだよね? 妹ちゃん優しいもん……んちゅ、レロォ……」
「うあ、あ、ん、うううぅぅ~~~!!」
「んっ、んぅ♪ ぷはぁ……だからいっぱい誘惑してあげる」
ねっとりと甘く、しびれるようなキスをリンネは何度も重ねてくる。
見た目とのギャップがすごすぎて、完全に俺はコントロールを乱されてしまった。
「不思議でしょ? たぶん『結菜はこんな事しない』って思ってるよね」
「う、うん……エロすぎて、もうドキドキしっぱなしで……」
「見た目が結菜でも全然別人だと思うと興奮しちゃうでしょ」
俺は頷いた。そのとおりなのだ。
女としてみた場合、リンネは最上級の武器を持っているのだから。
しかも可愛くて、エッチで、なんでも言うことを聞いてくれそうで……、
「実はね、これもエスノートの効力のひとつなんだよぉ?」
「!?」
「反転って言えばいいのかなぁ。名前を書き込まれた人と真逆に近い性質が付与されてるの……ルルカも、シフォンも、そしてあたしも!」
それはおそらく見た目のことではなく、内面を指すのだろう。
ルルカは穏やかに見えてとてもエッチだし、シフォンは情熱的な性格になってる。
そしてリンネは妹の結菜よりも自由奔放に感じる。
「ふふふ♪ 難しいことは置いといて、まずはこれ……いってみようか?」
「えっ!」
リンネは自分だけ体を起こし、俺の脚を割り広げて間に正座した。
さらに自分の太ももに俺の腰を引き寄せて、乗せてしまった。
この体勢は……!
「あっ、ああああ、だめだよリンネ! それ、それはあああ!」
「ほ~ら、つかまっちゃった♪ 可愛そうな囚人さん」
彼女の目の前では、硬くいきり立つペニスが左右に揺れていた。
それを優しく挟み込むように、柔らかな巨乳を自らの両手で開いた。
深い谷間でペニス全体をねっとりと絡め取るようにしてから、リンネは手を離す。
くにゅ……パチュウウウッ!
「あっ、うわあああああああああああああ~~~~!!!」
挟まれた瞬間、射精してしまいそうになる。
とびきり柔らかくて、つるつるしたバストの質感は、言い表せぬほど極上の快楽を紡ぎ出す。
ヌチュ、クチュクチュ、ヌルヌルヌルゥ~~~
「あ、ああっ、だめだこれ! 逃げなきゃ、おかしくなりゅ、うううっ、い、いいいい!!!」
「あはっ、もう無理だよ~。男の子は皆、逃げられなくされちゃうんだよ~」
リンネはほんの少しの間だけ、胸の谷間でペニスを自由に泳がせた。
それから、バストの両脇に静かに手を添えた。
「おっぱいの間で、ぱふぱふぱふ」
リズミカルに両手を動かして、リンネはペニスを左右から弄ぶ。
ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅくちゅくちゅうううう!
「んあ、ひいいいっ、きもちいいいいい!
「どんどん埋もれていくよ……ずぷずぷずぷずぷ」
今度は一瞬だけペニスを引き抜いてから、体を前に倒してきた。
そして胸の谷間に向かって肉棒を垂直につきたて、亀頭をゆっくり挿乳する。
クプ、ずにゅ、ずちゅずちゅうううう……
「あ、ああぁぁぁ……」
「もう見えなくなっちゃったね? おちんちんはビンビンだけど、柔らか~く縛られちゃうよ~」
味わったことはないけど、名器と呼ばれる膣内に挿入すると、おそらくこんな風に感じるのかもしれない。
柔らかすぎる肉の感触が無限に続いて、見えなくなった内側でもみくちゃにされる感覚。
しかもリンネのおっぱいはこちらに合わせて形を変えて、吸い付いてくる!
「こんなのらめえええええ! リンネ、リンネエエエエ!」
「叫んでも駄目~。これが私の得意技『残酷な看守の調教(プリズナー・ラブ・ドレイン)』よ? ほらぁ、きゅんっ」
クチュウウウッ!
可愛い掛け声と同時に、リンネのおっぱいに閉じ込められたペニスが切なく締め付けられる。
「あふうううぅぅっ!
「んふふ、きもちよかった? じゃあもう一度ね……きゅんきゅんきゅんっ」
クチュクチュクチュウウウッ!
「んはっ、駄目、ダメダメ、やめてええええ!!」
「おにいちゃん、セックス全然強くないねー? そんなに妹ちゃんの体に興奮しちゃってるんだ?」
「ち、ちが、これはあああ!」
「違うの? じゃあ外してみてよ。ほらほらほ~らぁ♪」
リンネはそのまま手を動かさず、俺が脱出するのを待ちながら見つめていた。
だが俺はすでに体力を完全に奪われ、このパイズリ処刑台から逃げ切る程度でさえ、腰を揺らせなくなっていた。
「はい、時間切れ。このままイっちゃえー♪」
「ま、まって! リンネ、ちょ……」
叫んでみたところで彼女が俺の言うことなど聞き入れるわけもなく……、
クチュウウウゥゥゥ♪
「あ……」
むにゅむにゅと形を変えるバストが、俺の感じる部分を集中的に責めなぶる。
今までで一番の柔らかさを味わったおかげで、俺が必死にこらえていた射精感が、一瞬で決壊してしまった!
「ほ~ら、ビクビクしてるよぉ?」
「あ、ぅあっ! あああああああっ、イくううううぅぅぅぅ!!」
ビュルル、ビュル、ビュルルッルルル~~~~~~!!
恥ずかしいほど叫び、腰を突き上げ、俺は爆ぜた。
許しを請うように彼女の名を呼びながら、柔らかな牢獄の中で懺悔の白濁を吐き続ける。
ビュク、ビュクンッ!
「うんうん、いい射精だね。いっぱい出てる……もっと出せるかなぁ?」
「や、やめ……あ、あああぁぁ!」
「クスクスッ、怯えちゃって可愛いなぁ。じゃあ終了ね。お疲れ様」
ヌチュ……
「これでやっと解放され――、」
ぴんっ♪
「あ、あああぁぁーーーーーーーー!!」
ピュクッ……
「あ、ごめんねぇ? 最後にちょっとだけかすっちゃった」
「ちが、い、いまのは……わざと……」
おっぱいから解放された瞬間、硬くなった乳首が亀頭にキスをするみたいに触れたのだ。
俺はただそれだけで、もう一度精液を捧げてしまうのだった。
「おにいちゃん、これからもリンネのことを宜しくね? できればこのままゴールインしたいなー」
快感の余韻が全く抜けきらない俺に、彼女が顔を寄せて囁く。
「な、なっ……!」
「ねえ、リンネを選んでくれたら……きっと幸せになれるんじゃないかな? 何でも叶えてあげるよ、おにいちゃん♪ 今度はゆっくり、おまんこしようね?」
そう言ってから、今度こそリンネは俺のそばから離れるのだった。
(2018.06.19 更新部分)
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