なにげなく沙雪のほうを見る。
 理由は特にない。
 こいつが好きとか嫌いではなく、本当になんとなくだ。




「ふふっ、それでいいよ?」

 何がそれでいいのかわからないが、沙雪は上機嫌になった。


「じゃあ……今からお兄さんは私の練習相手だよ?」


「うむ……」



 それから小春に対して、沙雪は得意げに流し目をした。


「ちらっ?」



 だがこんな少女たちの間に、男の奪い合いとか嫉妬の情などあるはずもなく……



「もういいもん! 小春はおにいちゃんのこと、あっちで待ってるもん!」



 俺の認識不足だった。
 少女たちの間にも、女同士の争いは存在するのだ。
 小春は涙目で部屋から出て行ってしまった。

「あーあ、いっちゃった……」


 そして部屋に残されたのは沙雪と俺。
 とても気まずい雰囲気を無視して沙雪が笑いかけてきた。



「さて、どの技から試させてもらおうかなぁ」


「……」


 沙雪は早速やる気を見せている。
 その表情を見て、なぜか股間が反応してしまった。


「ねえ、おにいさん……感じやすいところある?」



「……」


 そんなこと誰が教えてやるか!
 俺の気持ちを察したのか、沙雪が片眼を瞑った。


「自分からは言わないよねぇ」


「当たり前だろう」


「えへっ……じゃあ、当ててあげるよ!」


 沙雪の目が妖しく光る。

 先ほどまでの無邪気な雰囲気は息を潜め、獲物を狙う子猫のような目つきに変わる。


(――やばい!)


 背筋を走る悪寒。
 その目つき……何かを思い出す。
 そうだ、これは……沙織の目つきだ!


(雰囲気に飲まれたら負けだ!)


 あわてて俺は眼を瞑り、歯を食いしばった。


「えへへ……」



「たっぷりいじめてあげるよ、おにいさん」


「……くそっ!」

 沙雪に犯される妄想を振り払えない!


 再び眼を開けた俺は……




選択肢


1・沙雪のつやのある唇を見つめた

2・沙雪の胸元を見つめた

3・沙雪の長い脚を見つめた