『スライムバスター3 ~境界線からの使者~』
1・ルシェの部屋に行く
「ちょっと行って来るよ!」
ルシェの様子にただならぬものを感じたウィルは彼女のあとを追うことに決めた。
自分の勘が正しいと信じるなら、きっと明日以降の任務に関する話に違いない。
そう信じさせるだけの気迫が去り際の彼女の背中に感じられた。
「待ちなさいウィル! お願い、待って……」
ライムが不満そうに制止する。少し涙声のような気もする。
思えば最近ゆったりとした時間を二人きりで過ごす余裕もなかった。
たまにはライムと話し合いをするべきなのかもしれない。
しかし今夜はそばにリィナもいることになるし、自分が思うような展開は難しいと思う。
結局ウィルはルシェとの対話を選んだ。
パタン……
静かに閉めた扉の音がどことなく物悲し気に聞こえた。
後ろ髪を引かれる思いを感じつつウィルは目的の場所へと向かう。
■
「ようこそウィル様。私の部屋へ」
軽くノックをしたあと、緑色の扉を開けるとルシェがそっと寄りかかってきた。
絹糸のようなストレートヘアがウィルの顔を撫でる。
先ほどまでのおどけた様子もなく、ルシェは彼の顔を見上げていた。
まるで恋人同士のように。
「どうぞ、おかけになってください」
そこは予想外にしっとりとした内装の部屋だった。
大きな窓にかけられたカーテンは淡い緑色で安らぎを感じさせる。
壁にかけられた花も控えめで美しかった。
部屋の調度品はダークブラウンで統一されており自然とくつろげるような配慮がされている。聞けばこれらはすべてルシェの指示によるものだとか。
ウィルは来客用の椅子に深く腰を掛けた。3人がけとも思えるゆったりとした椅子だった。
となりにルシェがそっと寄り添う。
「あの場では話せないことがありましたの。今からお話しますわ……」
ルシェが語るそれらは思ったとおり極めて役に立つ情報ばかりだった。
北の大地についての歴史、棲息する魔物や植物、ブルーティアラの取り扱いや注意など……
ルシェの説明は博識を極めていた。
また敵の制圧、特にティフォリア城の構造やミルの性格分析などもレクチャーしてもらうことができた。
スライムの淫界としても今回は事態を非常に重く見ているらしく、ウィルたちに依頼を断られた際はルシェが率いる精鋭部隊がその任務を負うことになっていたという。
話の中でも、特に奪還するべきものについての知識はウィルも欲していたところなので、前のめりになって聞き入った。
ブルーティアラは液体に命を吹き込むことができる。
仮に岩石の表面を水で覆うだけでも、その水に命を吹き込むことでロックゴーレムのような生物を作り出すことができる。
また粘度の高い液体については分裂や再生産を促すことが可能である。
使用には大量の魔力を消費する……などなど。
ひと通りの説明を終えたルシェは深々と頭を下げた。
「ライムのことをよろしく頼みます。参謀としてではなく、親友として」
「ああ、約束するよ。でも意外だったなぁ……」
「そうですか。こう見えても私は彼女を認めておりますから」
言い終えてから、ルシェは良い香りの紅茶を淹れてくれた。
雑談をしつつウィルは彼女の表情を見る。素顔のルシェは穏やかで美しい女性だった。
ライムと肩を並べる実力者で、一時期は人間界にとっても脅威だった存在と仲良くお茶を飲んでいる自分が少しおかしく感じた。
「さて、もうひとつのお話をしても宜しいかしら……」
そっと肩に手を置かれたことでウィルは我に返った。
深い青色だったルシェの左目が、うっすらと明るい緑色へと変化してゆく。
■
ベッドに座ったままのウィルをやんわりと押さえつけるような体勢のまま、ルシェはそっと瞳を閉じた。
「今度は私を満たしてもらえますか……ウィル様。もちろん、お礼はいたしますわ。たっぷりと♪」
そして意識を集中して小さな声で何かの呪文を唱えると、まるでサナギから孵化する蝶のように、半透明の美しい体がヌルリと抜け出してきた。
彼女の背中からもう一人のルシェが現れた。
(こ、これって!!)
ウィルにとっては身に覚えのある光景だった。
このクリスタルパレスの一角で死闘を繰り広げた時に見せた…………!
「私の分身術、覚えてらっしゃいますか。分身と言いつつ、どちらも本体ですから」
にこやかに微笑むルシェの背後で「彼女」が増えてゆく。
分身体は着衣ではなく、生まれたままの姿でゆっくりとウィルに脚や腕を絡ませてきた。
まだ生暖かい粘液が彼の体をしっとりと濡らす。
「ああ、愛しいウィル様の……ふふっ、そろそろ頂きますわ」
ルシェの手のひらがそっとペニスを包み込む。
プルプルしたスライム特有の感触に思わずウィルは喘がされてしまう。
「ふあああっ、すごい……こんなに硬くて、くふぅぅ……ぅん、まとわり、つかせてもらいますね」
ニュプゥ…
「んあっ! な、なんだこ、ああああっ!!」
手のひらで弄ばれていたペニスの上に、静かにルシェの太ももが迫ってきた。
そして、ツプ……という水音と同時に、やわらかな粘液に包み込まれてしまった。
半透明の肉体に吸い込まれたペニスは所在なさげに震え続けている。
(気持ちいい、うあああっ、こ、これは……! 中でざわめいてるううぅぅ!)
ウィル自身を飲み込んだルシェの太ももはもちろんスライムの塊。
極上の滑らかさを保ったジェルの中を強制的に泳がされる。
「硬くて淫らなウィル様の分身……気を抜いたら先に果ててしまいそう……ですわ……」
うっとりした表情でルシェは彼を見上げている。
ゆっくりと船をこぐような動きはウィルを陶酔させると同時に責めている側にも快感を与えている。
一方で、本体側のルシェもウィルを優しく責めなぶる。
背中に抱きついて彼の耳を口に咥え、優雅な手つきで乳首や胸元をサラサラと撫で回す。
「ふぁああんっ!」
愛情に裏打ちされた華麗な指さばきに思わずウィルの腰が自然と跳ね上がった。
「感じてくれてるなんて……ああぁぁ、優しいのですね、その反応……病み付きになっちゃいますわ……」
ビクビク震え出す彼の下半身の動きに呼応した分身体のルシェが嬉しそうに微笑む。
そしてやんわりと彼の腰を抱き抑えつつ、太ももに閉じ込めたペニスをこねまわした。
「いひいぃぃぃっ!!」
スライムの内部が妖しくさざめいて擦れあう。
やわらかな刺が内部にいくつも生成され、ウィルの敏感な部分を淫らにかきむしってゆく。
涙のようにこぼれた我慢汁は瞬時にルシェの栄養源として吸収されてしまう。
「ふふっ、無理せずにもっと感じてくださいな。そろそろ私のほうからも本格的にご奉仕させていただきます」
ルシェ本体が耳元でそう告げると、分身体はペニスをあっさりと解放した。
しかし次の瞬間、ウィルの体の上で半透明の下半身がドロリと崩れ落ちた!
「ひいっ、うあ、あああああっ! んうううう~~~~~~~~~!」
喘ぎ声を上げた唇が奪われ、あっという間に下半身全体が包み込まれる。
ウィルの腰から下と、ルシェが一体化してしまった……
「いかがですか? キスをされながらの四肢拘束愛撫……」
ウィルは大の字に寝かされたまま腰から下をスライム粘液に拘束されてしまった。
しかも上半身だけになったルシェは彼の方を向いてクスクスと笑っている。
「手足の全てを喜ばせてあげますわ」
今度は本体のルシェが……ささやきながらウィルの両腕にスライムローションを塗りつけてきた。
妖しいヌメリがあっという間に広がってゆく。
「足の指先から脳みその中まで、このルシェのことだけ考えて……んちゅっ♪」
「んっ、んううううう!!」
ウィルは両手を動かすことができない。
スライムで動きを封じた後、ルシェは強制的に彼の唇を奪ってみせた。
「体中が美味しく味付けされちゃいますね? ふふふ、スライムバスターのスライム漬け、ですわ」
腰から下は分身に蹂躙され、上半身は本体に包み込まれ……何より敵意のない彼女の愛撫は魅力的だった。
ウィルはその誘惑を回避することができない。
背中を抱くように彼の体をきっちり固定したルシェは、彼をさらに無防備な体勢へと誘う。
「では全身愛撫……参ります」
「えっ……うあ、あぎっ、ひいいいいい!?」
ルシェは強く彼を抱きしめながら、その長い両足を伸ばし、スライムまみれのウィルの脚をさらに広げてみせた。
分身体がその足の間にそそり立つペニスを、そっと優しく握りしめる。
「手コキ、お好きでしたよね?」
「駄目だルシェ、それやばい、や、やめてええええええええええ!!!??」
返事をする代わりにルシェは怯えきった彼に向けて最高の微笑みを向けた。
グチュグチュグチュグチュッ……
ひねりを加えながら、焦らすような手コキにウィルは我慢できず悶え狂う。
「ふああああっ!!」
グッチュグッチュ、ヌリュ、グジュッ……
今度は先ほどと違って激しく上下にしごきまくられ、自分の意志にかかわらず体が波をうってしまう……
ニュグ、チュルルル、クチュウウウウ!!
さらにルシェは亀頭にトロトロの唾液を垂らし、その様子をウィルに見せつけた。
(こんなの我慢できないよ! あああぁぁ、ライムごめん、もうすぐ、う、うううぅぅ!)
がっちりと上半身を固定され、恥辱まみれの強制開脚をされたままでの射精がすぐそこに迫っていた。
分身体のルシェのしなやかな指先がウィルの睾丸をくすぐり、亀頭を優しく撫で続ける。
その間にも上半身には、なめらかな指先が這いまわり、呼吸の合間に唇を奪われて甘い媚薬と化したスライムを口の中に流し込まれる。
「もうイきましょう、ウィル様。出来れば一緒に……ね?」
「んあ、ふあああ、出ちゃうよっ! ルシェ、もうやめてえええええ!!」」
逃げることができない泥沼に閉じ込められたウィルの体が震え続ける。
もはや射精が近い。
「やめないで、ですよね? うふふふ……ほらほら、おちんちんが鳴いてますよ~~? クスクスッ、それえっ!」
クキュウウウウウウウウッ!
亀頭を撫でる指先が意地悪に折れ曲がったと同時に、ウィルの体がひときわ大きく跳ね上がった。
「あっ、ああああああああああああ!!!」
ビュクビュクビュクンッ!!
きれいな弧を描いて、ウィルの精液がルシェの顔にぶちまけられた。
「あんっ、こんなに……! しかもまだ出てる」
射精直後の精液をあっという間に吸収してから、今度は本体のルシェが白いミルクを溢れさせた先端をクリクリと弄んだ。
「ああああ、だめええええええ!!」
敏感すぎる肉棒をグニグニといじられ悶絶するウィル。
「そんな熱い目で見られたら、たまらなくなってしまいますわ?」
怯えきった子犬のような目で見つめられた淫界参謀がこの好機を逃すはずもなかった。
息も途切れ途切れの彼の顔を掴み、強引にキスをしながら馬乗りになる。
分身体が背後に周り、本体のルシェをしっかりとサポートする。
何度もキスをされた際に流し込まれたスライムが精力剤の代わりとなって、ウィルのペニスが萎えることを許さなかった。
「さあもう一度しましょう……貴重な二人きりの時間ですから」
妖しく微笑みながら、ルシェはためらうことなくいきり立つ肉棒に腰を沈めた。
――約二時間後。
ベッドの上でスライム淫界の参謀は上機嫌だった。
まるでここ数ヶ月間の疲れが綺麗に排除されたような、清々しい表情をしている。
しっとりと濡れた緑色の髪をブラシで整えながら、自分の横でグッタリと伸びているウィルの胸板をそっと撫でてみる。
「ぁふうっ……」
何度も彼女に求められ、精を搾りつくされたウィルは指先すら動かすのが億劫になるほどだった。
それでもまだペニスに与えられた快感の余波が全身を断続的に震えさせている。
しばらくは自力で立ち上がれそうに無い。
まだまだ敏感な様子の彼を見て、ルシェはさらに満足する。
今では納得しているとはいえ一度は負かされた宿敵へのリベンジ。
もう一度指先を…………今度は彼の耳をくすぐってみる。
「くっ、ううぅ……るしぇぇ!」
じれったそうに悶えるウィルを眺めながら、ルシェは何度かその悪戯を繰り返した。
■
「さて、氷と炎……相反する属性。しかも『境界線』の向こう側ではフィールドが相手の味方をする。いかにライムとはいえ、今回は試練の旅となるでしょうね」
ふと真面目な表情でルシェがつぶやく。ウィルを責める指先の動きは止まっている。
数秒程度、思慮にふけっていた彼女が、サイドテーブルの上で綺麗に畳まれた布をそっと掴んだ。
「必ずどこかの局面で、土の精霊・エレメントの力を借りねばならぬ時が来るはず……そのときは遠慮なくこちらを使ってくださいね」
そしてもう一度彼の胸を指先でなぞってみると、今度は小さくビクンと震えたきり動かなくなった。
快楽の呪縛から解放された途端、眠りについてしまったようだ。
「うふふ……可愛らしい寝顔ですね。ごちそうさま。心に焼き付けておきますわ♪」
ルシェは静かに顔を寄せて、寝息を立てるウィルの頬に唇を当てた。
「親愛なるウィル様に、どうか精霊のご加護を……」
ルシェが目を閉じて祈りをささげると、折りたたまれた緑の布が少しだけ輝きを増した。
■
ウィルが目を覚ましたのはすっかり夜が更けてからの事だった。
窓の外に浮かぶ月明かりが眩しい。
隣ではルシェが幸せそうに寝息を立てていた。
(ごめんね……)
彼女を起こさぬよう、そっとベッドから這い出たウィルは
来た時と同じようにこの部屋から静かに抜けだした。
「ライムとリィナはさすがにもう眠ってるだろうな……」
常夜灯のついた長い廊下を忍び足で歩くと、程なくして客室へと辿り着くことができた。
(騒がしくしないように気をつけて入らなきゃ)
キイイィィィ……
ぐいっ!!
「うわああああああああああ……ッ!!!」
「遅い! どんだけ待たせるのよ!!」
ウィルが叫び終わる前に、ライムが彼を物凄い力で部屋の中に引っ張り込んでしまった。
思わず叫び声を上げてしまったというのにリィナは何事もなかったかの如く眠り続けている。
問題はライムである。
寝不足なのか怒りのせいなのかわからないが、瞳が真っ赤に燃えている。
どう考えても普通の言い訳など通用する状態ではない。
(こういう時は素直に謝るしかない…)
口を結んだままこちらを睨んでいる赤髪の美女に、ウィルは思い切り頭を下げてみせた。
さらにできるだけ誠意を込めた口調で彼女に語りかける。
「ごめんよライム、でもキミに大切な話があるんだ。ちょっと遅い時間だけど少しだけいいかな」
「な、なによ……戻ってきてくれたなら、それでもう私は…」
ウィルが目線を上げてみると、ライムの美しい顔の輪郭が目に入った。
目元は少し潤んでいて、唇もさっきより少しだけ穏やかに感じる。
どうやら機嫌は思ったほど悪くなかったようだ。
「ライム、遅くなってごめん…」
彼女の名を呼びながら、そっと細い肩を抱き寄せる。
何も云わずにライムも片足分だけ、彼に近づいてみせる。
きっとこの部屋を月明かりが照らしていたら、ぴったりと寄り添う二人の影が床に映っていたに違いない。
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