『スライムバスター3 ~境界線からの使者~』
控えめなノックに続いて、部屋のドアノブが静かに回った。
そして顔を出したのは――
「失礼しま……あら、お取り込み中でしたか?」
「ホント、失礼ね……」
呆れた様子でライムが言う。
「ルシェ様、どうされたのですか~?」
突然現れた淫界参謀の姿にリィナも少し驚いているようだ。
緑色の長い髪をかきあげながら、少し戸惑った様子でルシェは言う。
知的さをにじませる長いまつげが物憂げにゆれている……
「そ、その……皆さんの様子をね? 参謀としても把握しておかねばと」
「本音は?」
「ウィル様とお話したいなぁ……って…………キャッ♪」
ライムにジト目で睨まれながらも、そんなことはお構いなしといった表情でルシェは笑顔を作った。
彼女の役職、ポジション的にも常に緊張を強いられているのだろう。オフになったとき、普段とのギャップが激しすぎるのだ。
特に目の前にウィルがいるということでテンションがあがっているようだ。
「ふん……しばらく見ないうちに鬱陶しい性格になったのね、ルシェ」
「あら、あなたのほうこそ心も顔も丸くなって驚きですわ?」
「なっ、なんですって!」
瞬時に身構えるライムの体から、紅のオーラがほとばしる。
それに呼応するようにルシェの背中からは緑色の――
「お姉さまたち駄目です~~~~! ここを戦場に変えちゃ駄目ですってば!!」
臨戦態勢になったスライム界屈指の実力を持つ二人の間に割って入るリィナ。
彼女にしてみればこの手の仲裁は何度も経験してるので、タイミングは熟知しているのだが、傍で見ていたウィルは背中に流れる冷や汗が止められない状態だった。
「コホン、そうですね……リィナの言うとおり」
数秒間の睨み合いの末、矛を収めたのはルシェだった。
「単刀直入に申し上げますわ。ウィル様、もし宜しければ今夜は私にお時間をいただけませんか?」
「まだいうのアンタ!!」
食って掛かるライムを無視してルシェは続ける。
「私の居室はここを出た廊下の先、緑色の扉の部屋ですわ」
その言葉には先ほどまでの浮ついた様子はなかった。
もしかしたら重要な何かを伝えようとしているのかも…………
「あちらでお待ち申し上げております」
用件を伝え終えたルシェはゆっくりと背を向けた。
どうする?
1・ルシェの部屋に行く
2・ライムたちと一緒に過ごす
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