『スライムバスター3 ~境界線からの使者~』








 突然唇を奪われ、ミルティーユは苦しそうに顔を背ける。
 その動きを先回りして、ウィルは再び彼女の呼吸を奪った。

「んううぅぅ……!」

 切ない声が響き渡り、徐々に彼女の抵抗は小さくなってゆく。
 玉座の間は柔らかいなフロアで、厚さが2センチ以上ありそうなカーペットが敷かれていた。

 ウィルは氷の女王を抱きしめつつ、そっとフロアに横たわる。
 暫くの間、恍惚とした表情でなすがままにされていたミルティーユの瞳が大きく揺れる。

「くっ、こうなったら……!」

 体内から魔力をかき集め、逃れようとする彼女の手にウィルは指と指を絡ませた。

「駄目だよミルティーユ、何か勘違いをしている」

「なっ、なんですって……」

 お返しにとばかりに、ウィルの魔力が彼女の全身を包み込む。
 それはとても暖かく、癒しの力を放つ。

「戦いの真髄は、相手を認めあうことだ」

 ライムと殆ど変わらない均整の取れた体に指を這わせると、ミルティーユの顔が紅潮した。

「心を溶かそう。たぶん僕も、キミに溶け合うから」

「っ! あ、あなたも……私と?」

 見つめ合い、確かめ合う。
 それがバトルファックの真髄であると、長い時間をかけてウィルは掴み取っていた。

 特に目立った技巧を凝らしたわけでもなく、彼が優しく振る舞うだけでミルティーユの性感は極限まで高められてしまう。

 自分だけを見つめてくれているウィルから目がそらせない。彼と一緒に絶頂したい。
 わがままと言われても、愛されたい……幾つもの思いが交差して、ミルティーユは、溶けた。

「だ、駄目……逆らえないッ! あ、ああああぁぁ~~~~~~~~!!」

 同時にウィルも果てる。
 二人が絶頂する瞬間を、ライムは涼し気な表情で眺めていた。




「ああ見えてライムは……キミのお姉さんは優しいよ」

「どうしたのですか、急に」

 呼吸の乱れも収まり、気持ちも少し落ち着いた頃合いを見計らってウィルは彼女に告げる。


「口は悪いけど、性格は悪くないんだ。あと見た目も悪くない」

「ふふ、なにそれ」

 心を溶かし合うほどエッチは上手なのに、口は達者じゃないのね……とミルティーユは笑った。


「うああぁ、つ、つまり! 僕達の仲間になれよ、ミル」

「えっ……!」

 あまりの言葉にミルティーユは絶句する。
 敵地の中心で相手を中身に引き入れるなど、およそありえない提案だった。

 降伏勧告とも違う、自発的な行動を促すための……いや、違う。

 目の前の男は、本心からそう言っているのだとミルティーユは感じ取った。

「これが、スライムバスター……いいえ、ウィル様の力なの……?」

「仲間になれ。キミもそれでいいだろ? ライム」


「残念だけど、それは無理よ」

 見上げた先で返された冷徹な言葉にウィルは驚く。
 それ以上に、未だ臨戦態勢の彼女に違和感を覚える。


「えっ」

「……こいつがいる限りね!!」


「待て、ライム! やめろおおおおおおおお!!」

 ライムはウィルの静止も聞かず、ミルティーユに向かって紅蓮の拳を打ち下ろした。




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