『スライムバスター3 ~境界線からの使者~』
ミルティーユは戴冠し、ブルーティアラの力をゆっくりと解放してゆく。
「凍てつく大地に宿る精霊よ、我に力を貸し与えよ……」
厳かに呪文を唱え、さらなる力を願う。
すると彼女の体内に宿る水のエレメントが共鳴して、玉座の周囲に幾重にも小さな波紋が浮かび上がる。
さらに暖かな青い光が彼女を包み込み、一瞬だけ耳を裂くような高音を生じる。
「大地の崩壊はこれで止まりました……」
その一言で、この場にいるもの全てが安堵した。
しかしすぐにミルティーユは異変に気づく。
「いいえ、駄目! ひとつだけ止められない……!」
「どうしたの、ミル!?」
「圧倒的に足りないのです! 魔力が!」
すがりつくような目で、ミルティーユはライムを見上げた。
「そうだ……きっと、お父様はこうなることを見越して、私の魔力を使い切ったのですね」
「ちゃんと説明しなさい」
ライムに諭され、ミルティーユが語り始める。
大陸の殆どの異変は、今のブルーティアラを用いた術式で元通りに戻せたと思う。
しかし海に浮かぶ氷塊のうち一つが、自分の思い通りにならない。
魔力を帯びたその氷は、すでに行き先が決められていて、それは境界線の向こう側だという。
「でも残りはあと一つなのでしょう? ありがとう。充分よ」
「しかしお姉さま! その一つが……この大陸の半分くらいの大きさなのです!」
泣きながら脅威を告げるミルティーユに、ライム以外の全員が言葉を失った。
「そう、わかったわ。貴女はいい子ね、ミルティーユ」
「ライム、お姉さまぁ……」
不安げに泣きじゃくる妹を、ライムは強く抱きしめて、そっと囁いた。
「ひとつくらいお姉ちゃんらしいこと、私にさせてよ……」
そしてミルティーユがかぶっていたティアラを手にして、窓の外へ身を乗り出した。
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