Elbereth

 ――布団を干せ。
 ――新聞はどこだ。
 ――味付けが好みと違う。
 ――カーテンが気に入らない。
 ――テレビがおもしろくない。
 ――オリンピックが云々。
 ――茶。

 ……五月蝿い。

 絶えず柊柯の文句と命令が飛んでくるので、とてもゆっくりと寝てなどいられない。
 メイドはメイドで、息をつく間もなく動き回っている。
 これではどちらにも声を掛け難い。
 メイドには仕事の邪魔になるし、柊柯には……どうせ邪険に扱われるに決まっている。

(ずいぶんと暮らしにくくなったな……)

 一昨日までの静けさが遠い昔の思い出のように恋しい。
 見つからぬよう、こっそりと外出することにした。

 どうせ玄関を出れば音で気付かれるのだが……

(僕は何をやっているんだろう……)

 大きなため息をつき、逃げるように家を発つ。

Elbereth

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