Elbereth
帰宅すると、柊柯が庭に居るという不意打ちが待っていた。
メイドに運び出させたのであろう白い椅子に白いドレスで納まって白い梅を眺めている。
どんな罵倒が待っているかと思いきや、柊柯は梅を眺めるままに言った。
「昔はね」
「は?」
「花といえば梅だった」
「はあ」
なんだか物憂げだった。冬眠明けから、腹がふくれて落ち着いたのだろうか。
「でも、今は桜かな」
「うん」
「どうして?」
「さあ」
柊柯は酷く疲れたような顔で僕を横目に見る。
「……変わらないね」
「……何が?」
「さあ、とか。ふーん、とか。気の抜けた返事ばかり」
「…………」
「人一倍難しい顔をするくせに、何を考えているかは言わない……」
言うだけ言うと、柊柯は再び梅に視線を戻した。
僕は何か返事をしようと言葉を探したけれど、それは瞬く間に遠ざかり、見失ってしまったので、結局何も言えなかった。
諦めて何も言わずに自室へと向かった。
「おかえりなさい」
「……ただいま」
或いは、もとより黙る他に選択肢はなかったのかもしれない。
Elbereth
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