Elbereth

 コーヒーに牛乳を注ごうとしたら望む量の4分の1も出ずになくなってしまったので、冷蔵庫の奥から新しいパックを引っ張り出していると、メイドがエプロンで手を拭いながらやってきた。

「カフェオレですか?」
「うん」
「お淹れします」
「いや、いいよ。もう」
「でも」
「いいってば」
「ダメです」

 ……取り上げられた。

 仕方がないので、大人しく椅子に座って出来上がりを待つことにした。
 メイドが牛乳パックを開けて、コーヒーに……

「うっ」

 僕は不意に声を上げていた。
 メイドの手が止まる。

「もう一度やってくれ」
「……は?」
「もう一度牛乳パックを開封する動作をしてくれ」
「はぁ」

 屋根の折り目をなぞり、あけぐちの方向を確かめる。
 くぼみに指を挿し入れ、あけぐちを破る。
 広げた屋根を挟み、注ぎ口を開く。
 注ぎ口を摘んで折り目をつける。
 指の付け根で再び注ぎ口を開く。

「……こうですか?」

 この間、約2秒。

「うああっ」
「…………」
「も、もう一度やってくれ」
「……ご自分でどうぞ」

 怒られた。

Elbereth

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