Elbereth

 居間を通りすがると、メイドと鉢合わせした。何だかずいぶんと久しぶりに顔を見るような気がする。
「あ……おはようございます。おか……」
「お体の調子はもうよろしいのですか」
 メイドの言葉は突如飛んできた声により遮られた。
「……柊柯様?」
「そうですかそれはようございました」
 振り返るとそこに奴は居た。
「ですがくれぐれも油断はなさらないようにしてくださいましね風邪は引き始め治りかけが肝心と申しますから」
 次々とメイドの言いそうな言葉を取り上げては投げつけてくる。
「そうだ今日の夕餉はご主人様のお好きなものを用意いたしましょう何がよろしいですか」
「……鰻」
 柊柯は黙って歩み寄ってくると、僕の足を蹴り付けてきた。
「痛っ!」
「承知いたしましたそれでは早速買って参りますね」
 終始無表情のまま柊柯は去って行った。恐らく鰻を買いに行ったわけではないと思う。
 メイドは思いつめた顔をしていた。
「私は何か間違っていたのでしょうか?」
「いや、そんなことはないと思うけど……」
「……買って参りますね」
 俯き加減のままメイドは台所へと消えていった。

Elbereth

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