Elbereth
メイドがカーテンを開く。
明かりの落とされた薄暗い部屋に強い陽光が射し込んでくる。
メイドは目を細めて光に満ちた眩しい春の景色を硝子越しに見つめている。
なんということもない平穏な日常の一場面。そのはずが、それが僕には堪らなく嫌に感じられた。
「やめろ」
「……はい?」
呆気にとられた顔で振り返った。
「逆光をやめろ」
「はあ」
不承不承といった様子で再びカーテンを閉める。その背中が酷く哀しそうだったので、言うつもりのなかったことが口を突いて出てしまった。
「光に溶けて消えてしまいそうに見えるから……」
「……ぷっ」
……吹き出した。
メイドは掃除を終えて部屋を出て行くまでずっとくすくすと笑っていた。そんなに可笑しいのか。
Elbereth
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