Elbereth

 目覚めて窓から光に満ちた春の景色を見渡す。
 ゴールデンウィーク、か。
 忌々しい。



 その日の朝食は独りだった。

 いつもは2人の食卓。1人減れば当然1人の食卓。
 あれが居たからといって食事が楽しくなる要素は欠片ほども無いないのだけれど。
「今日は夜中までお出掛けだそうですよ」
 たまよはといえば、洗濯物を抱えて暇なく動き回ったりしているから、とりあえずそこに座っていろと言うわけにもいかなくて。
 自分の鳴らす食器の音だけがずいぶんと虚しく未だ覚め切らない頭の中に響いた。
「お昼は一緒にしましょう」
 朝食を食べ終え、物干しで打ち明けると、たまよは手を止めて優しく微笑んでくれた。



「この後はどうするの?」
 ふと思いついて尋ねると、たまよがパンを千切る手を止めて私を見た。
「この後の予定ですか?」
「そう」
「後片付けをしますが」
「その後は?」
「軽くお昼休みをいただきます」
「その後は?」
「洗濯物を取り込みます」
「その後は?」
「お掃除をします」
「その後は?」
「夕食の支度をします」
「……その後は?」
「夕食の後片付けですね」
「その後は!?」
「お風呂の準備とか……」
「その後はっ!?」
「特になければそれで終わりですが……」
 なんだか聞いていただけなのに巨大な疲労が襲ってきたように感じて、私は力なく椅子にもたれかかった。
「あなたね。毎日そんな生活をしているの?」
「そうですね。概ね」
「休みも無しで?」
「ありますよ。昼と眠る前に」
「一歩も外に出ないで?」
「出ますよ。お買い物に」
「そんなのものは休養や外出とは言わないの!」
 思わずテーブルを叩いて激昂する。食器が一斉に跳ねて鳴った。
「……そうですか?」
「そうよ。辛いでしょ?」
「いいえ、取り立てて辛いということは……」
「どうしてよ。おかしい。絶対」
「メイドですから」
 思い切り髪を掻き乱して奇声を発したくなった。私が少女じゃなかったらきっとそうしていたと思う。

Elbereth

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