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力尽きた右近は、白絹の重ね布団に崩れるように身を沈めた。
惣一郎は右近を見下ろすように側に座り、まだ息の整わぬ右近の背をゆっくりと撫でさすった。
「病み上がりゆえ、今宵は赦してやろうとおもうたが…。触れてしまえば、やはり止められぬ」
「許せ…」
「いえ」
右近は片頬を絹布団に押し当てたまま、ちいさく呟いた。
惣一郎の手があやすように肌の上を行き来する。右近は心地よい手のぬくもりにしばし身を預けた。不思議な安心感と交わった後の疲れから、右近はついまどろみそうになった。
それを察したように、惣一郎の手は優しい動きを繰り返した。
右近の瞼が重くなりかけた頃、
「もう…無理か?」
惣一郎が右近の背に再び覆いかぶさってきた。
けだるさも手伝い、
「殿…いつまで斯様なことをお続けになります?」
言い出せずに悩んでいたことが、溜息のごとくこぼれた。
「続く限りいつまでも…じゃ」
何を勘違いしたか惣一郎はくすりと笑い、唇で右近の背中を這い降りていく。
羽毛のごとき優しい感触に、またも右近は陶然となりかけたが、
「私なぞ、そろそろお褥御辞退の年ですぞ…」
口にした以上、話してしまわねばと、ここは理性が勝った。
「それは『奥』の話じゃ」
「寵童ならば『御辞退』するのはもっと早い。私はとっくに前髪を落とした身です」
「そなたは例外じゃ」
「世間に対しそれでは済みませぬ…はしたない、わきまえのないと誹りを受けましょう」
淡々と口にしながらも、自身の言葉にせつなさを覚える右近であった。
それでも言わねばなるまい。
「やはり、お世継ぎを」
「そなた…」
「奥方が苦手だとおっしゃるなら、早う…若い側室でも召し出してはいかがですか?」
惣一郎もこれには驚いたのか、いきなり動きを止めた。
「そなた、本気で言っておるのか?」
「はい…お世継ぎができねば一大事にござります」
ほろ苦さを噛みしめながら、右近は続けた。
「私に毒を盛った者も、大方そのことを案じて…警告するつもりだったのやもしれませぬ」
しばし、鉛を飲んだような沈黙があった。
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