
十五の巻「若紫」4
| by 戸田采女 |
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誠之進は三郎の寝間着の帯を解き、そっと引き抜くように取り去った。 夜は長い。 誠之進は気を取り直すと、三郎の脚の間から身を起こした。自分も帯をとき寝間着を脱ぐ。下帯も取り去って再び三郎の隣に横たわった。三郎は前をはだけたままで、まだ寝間着に袖を通したままだった。そっと背中から抱き起こして寝間着を脱がせた。 一糸纏わぬ姿で抱き合う。 あらためて肌と肌で触れあった途端、誠之進の血が沸き上がった。滑らかな象牙色の膚が、吸い付くようにぴったりとあわさってくる。誠之進の屹立が一段と固さを増した。三郎にもそれが伝わったのか、困惑した瞳で誠之進を見つめてくる。このままでは誠之進が気の毒だと思いつつ、自分の身に起こることが不安でたまらないのだろう。 誠之進は黙って唇を寄せた。深く口づけを交わしながら、脚を絡め、身体を密着させると、時々顔を逸らして三郎が切なげに喘いだ。誠之進も正直もうぎりぎりだったが、慣らしもせずに挿入するわけにはいかない。 抱き合いながら横臥すると、誠之進は三郎の双丘の谷間に指を滑らせた。 「あっ…」 蕾に触れた途端、三郎が息を飲むのがわかった。やはり怖いのだろう。三郎のそこは誠之進の指を拒むかのように固く閉じていた。部屋に傷薬でもおいておけばよかったと悔やんだが、何も用意していなかったのだから仕方ない。一瞬どうしたものかと悩んだ誠之進だったが、 「若、うつぶせに寝てごらんなされ」 瞳を揺らしながらも三郎は素直に従った。 背中から腰にかけての優美な線をしばし目で楽しむと、誠之進は双丘の上に屈み込んだ。 「な…に?!」 息のかかる感触に、三郎が怯えたように振り返った。 両手で尻を軽く押さえ、奥に息づく蕾に誠之進は舌を差し入れた。 何をされているか理解した瞬間、三郎は激しく身を捩って逃れようとした。 「い、嫌だ…!」 三郎が必死で脚を閉じようとする。誠之進は三郎の脚の間に身を割り込ませると、腰を両手でつかみ、あらためて秘所に口づけた。 「よさぬか…、誠之進!」 三郎が涙声で訴えたが、誠之進は耳を貸さない。 「そのような…とこ…ろ…」 羞恥で鳥肌をたてているのがわかったが、誠之進は別の反応を引き出すべく舌で蕾をそっとなぞる。薄暗い部屋の中、秘処をなめる濡れた音だけが二人の耳に届いた。 「い、いやだっ……」 耳を塞ぎたくなるような音に、三郎が耐え難げに背を反らせた。羞恥に見悶える三郎の反応が、いやが上にも誠之進の劣情を煽り立てる。誠之進は閉じている入口を、時にやさしく、時に強引にこじ開けようと試みた。 「誠之進……っ」 嗚咽を堪えるようなくぐもった声音で、三郎が苦しげに誠之進を呼んだ。 誠之進が根気よく愛撫を続けると、こわばっていた三郎の筋肉がわずかに緩み、息使いに微かな艶が混ざり始めた。 「う…あっ…」 少し入口が弛んだ隙に、誠之進は指で開いてより奥まで舌を侵入させた。内壁を舌先で舐めたりつついたりすると、三郎が腰をくねらせて声をあげた。 「嫌だ…、あっ…気持ち…わるいっ…」 大腿がぴくぴくと震えている。誠之進は前の具合を確かめようと、手を回して触れてみた。言葉とは裏腹に、三郎のものは再び腹につくほどの勢いを取り戻していた。 初めての交合が痛いだけに終らぬよう、誠之進は辛抱強く舐めたり指で広げたり、そこが十分にほぐれるのを待った。やがて、指一本が自由に通るようになると、注意深く抜き差しを始めた。 「うっ…ん」 三郎が声を殺して呻いた。 誠之進はそのままゆっくりと中をほぐすように指を動かしてみる。 内壁を指で擦られる度に、三郎は敷布を掻きむしりながら切なく鳴いた。 指を二本に増やすと、苦しげに仰のきながら腰をくねらせる。 誘うような動きに誠之進は息をのんだ。 (こ、これ以上は待てぬ…) 三郎とひとつになりたかった。我慢も限界に達した誠之進は、指を引き抜くと後ろから三郎に覆い被さった。己の楔を三郎の蕾にあてがおうとしたとき、 「誠之進…もう、いいから…」 三郎が潤みきった瞳で肩ごしにじっと見つめてきた。 (何という目をされるのですか…!) 牡の本能を直撃され、誠之進の中でたがが外れた。 三郎の菊座に先端をあてると、肉の抵抗を感じながらも半ば強引に腰を進めた。 「あっ…ああっ!」 鋭い悲鳴をあげる三郎を後ろから両腕で抱きしめた。 熱くて狭い三郎の中。 驚きと痛みに、三郎の身体が再びこわばった。すかさず前を手で慰めながら誠之進は腰を進めた。少しずつ秘肉をかきわけるようにして根元まで入れた。 辛抱強く慣らした介あって切れたりはしなかったが、さすがに圧迫感で苦しそうな息をしている。泣き顔が可哀想な気もしたが、やわらかい肉襞は隙間なく誠之進を包み込み、深い酩酊へと誘う。 (三郎ぎみ…!) 想像以上の心地良さに、思わず誠之進は眉根を寄せた。 無論、物理的な快感だけではない…。 愛しいものと一つになれた歓びに、心がどうしようもなく昂った。 奥深くまで誠之進を迎え入れた三郎のそこが、真綿のように締め付けてきた。 高波のような快感が何度も襲い来る。誠之進は堪え切れずにニ、三度大きく身震いした。 (ば、ばかな…) 一瞬頭の中が真っ白になった。 童貞ではあるまいし、挿れただけで達するとは何という失態…。 三郎と深く繋がったまま、誠之進は呆然自失に陥った。放出の余韻と別のショックにしばし言葉を失う。 だが、三郎は何が起こったのか、あまり理解していないようだった。誠之進と一つになれた嬉しさか、身体が少し慣れてきたせいか、うっとりとまばたきをくり返している。いきなり激しく動かなかったのがかえって幸いしたか…。誠之進の惨めな気分は幾分か払拭された。 「三郎ぎみ…」 先に達してしまった申し訳なさで、我ながら情けない声が出た。 「誠之進…」 三郎が浅い息をしながら誠之進の名を呼んだ。 「お辛いですか…?」 囁くように尋ねれば、左右に首を振って言下に否定した。 「…大丈夫じゃ」 熱っぽいかすれたような声で呟くと、夜具の上、誠之進の手を探してそっと指をからめた。胸が痛くなるような仕種に、再び誠之進のものが勢いを盛りかえした。 こめかみにそっと口づけながら、三郎の中で少し動いてみた。今し方放ったものがほどよい滑りを与えてくれる。これなら三郎もさほど辛くはないだろう。ゆっくりと抽走を始めると、まもなく三郎の唇から苦しげな、しかし何処か甘さを含んだ声が洩れ始めた。 「誠之進…んっ…あっ…うう」 「三郎ぎみっ…」 敷布の上をさまよい始めた三郎の手に、誠之進は己の手を握らせた。猛り立ったもので角度を変えて内壁を擦ってやる。ある場所に当たった途端、三郎が誠之進の指をきゅうっと握りしめた。もう一度同じ場所を軽く押すように突いてやると、 「やっ…やだっ、誠之進…」 三郎が躯をびくりと震わせ、肩ごしに誠之進を振り返った。 「ここは…お嫌なのですか?」 意地悪く尋ねながら、誠之進がさらに何度か狙った場所へ打ち込む。三郎は涙ぐんで敷布に顔を押し付けた。 「くうっ…ん、…ああっ」 誠之進の動きに合わせて、三郎の双丘から大腿にかけての筋肉が、悩ましくうねった。膚が桜色に染まり、しっとりと汗ばんでくる。その様子を上からじっと見おろしながら、誠之進は優しく腰を揺すぶった。 「あ…ふっ…うう」 「…初めてなのに…そのような声を出して。…はしたない方ですね」 「っ…ばかものっ…」 お仕置きとばかりに、誠之進は一度腰を退いてから深く奥を突いてやった。 「やだっ…ああっ…」 三郎の閉じた両目から涙が溢れ、次の瞬間、三郎の秘処が絞りこむように収縮した。 (な、何という…っ) 具合の良さにたまらなくなった誠之進は、己のものを深く埋めたまま、三郎の腰を掴んで引き揚げた。より自由に動けるよう膝立ちになって、叩きつけるように腰を使う。崩れ落ちそうになる三郎の身体を両手で支え、さらに奥まで楔を打ち込んだ。 誠之進が腰を突き進めると、 「あっ…あ…ああっ」 三郎が切ない声で鳴く。 今まで、三郎がかわいくて、愛しくて、手の中で大事に大事に守りたいと思っていた。だが、こうして閨を供にしてみると、眠っていたもう一つの感情が揺り起こされた。 声が枯れるまで泣かせたい。 身体中に所有の証を刻んでやりたい。 誠之進のことしか考えられなくなるよう、躯の隅々にまで快楽を憶えさせてやりたい…。 「せ、誠之進…、やっ…もう…」 激しく揺さぶられ、三郎の口からひっきりなしに喘ぎが洩れている。 「若…いましばらく…っ」 「も、もう…だめだっ」 四つん這いになった三郎の大腿が小刻みに震え始めた。 肉のぶつかる音と荒い息使いが部屋に充満する。 「誠之進っ…ん、あああっ──!」 引き絞るような悲鳴をあげて三郎の身体が痙攣した。反射的に菊座が誠之進のものを締め付けた。 快感が脳天に突き抜ける。 (三郎ぎみ─!) 誠之進は三郎の身体を砕けるほどに抱き締めて、想いの証を中に放った。 先程の乱れ方が嘘のように、三郎は誠之進の腕の中であどけない寝顔を曝していた。 あのまま力尽き、ほとんど意識を手放すように眠りに落ちた三郎。 誠之進の肩口に頬を押しあて、すやすやと穏やかな寝息をたてている。愛しい身体を両腕にくるみこみ、誠之進は天井を見上げてほうっと息をついた。 心底想う相手と契る幸せを、誠之進は今宵初めて知った。この安らかに満たされた想いを何と表現していいのかわからない。部屋を抜け出して忍んできた三郎の勇気に心から感謝した。 「お側を離れませぬ…」 数え切れぬほどくり返してきた言葉。 これからも、命ある限り、ずっとくり返していく言葉。 改めて胸の中で呟くと、三郎を起こさぬようそっと額に口づけた。 明日の朝、さてどうやって三郎を部屋に帰そうか…。皆が起き出す前に、髪を結い直してさしあげねばならぬし…。などと、現実的なことを思いめぐらしている間に、誠之進の瞼も重くなってきた。 とうとう油が尽きたのか、行灯の炎がふっとかき消えた。 暖かな波の合間をたゆたうような幸福感に浸りながら、誠之進も眠りに落ちてゆく。 恋焦がれながらも、打ち明けることなく終った初恋が、静かにひっそりと記憶の彼方へ歩み去っていった。 |
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Copyright © 2003 戸田采女 All rights reserved. 身供の目に狂いはなかった…。ううっ、夜の帝王の座を奪われぬよう、身供も精進せねばならぬな…』惣一郎 |