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NOTE
狂熱・2 2007/08/18

「く……!」
「しゅう……ご……っ」

二人が吐き出したのはほぼ同時だった。男の生理は現金だから、放出してしまえば急速に身体の熱は冷めてゆく。
俊二の情欲が熱を帯びてゆくのとは裏腹に。
息を整えながら、俊二は掌に放たれた秀吾のものを、名残惜しそうに舐め上げた。
殆ど無意識の行動だった。
一人で慰める時には、何度もその行為を想像した。しかし、実際に口の中で感じる秀吾は、酷く生々しくて、俊二は一瞬だけ顔を蹙める。

「……っ!」

息を呑む気配を感じて、ふと秀吾の顔を見る。
そこには、これまでに見たこともないような、せっぱ詰まったような表情があった。

「うわ、まっず」
冗談で済ませようとした俊二の言葉に、秀吾は反応しなかった。
無言で手首をつかみ、秀吾は俊二をベッドに押しつける。
「……お前、それだけ煽って」
「は? 煽る? 何を……」
言うとるんじゃ、という言葉は、秀吾の全てを喰らい尽くすような口づけに遮られた。
息をつく暇もなく、舌を絡め取られ、歯列を舐め上げられる。
「う……く、な、秀吾……っ」
その急激な変化について行けない俊二が身じろぎしようとすると、秀吾はシャツを捲りあげて、俊二の小さな突起に歯を立てた。
「っつ……! バカ、やめ……!」
「誰がやめるか」
秀吾の低い声に欲情が滲んでいるのがわかった。硬直する俊二に、秀吾が畳み掛ける。
「お前、俺が我慢しとるなんて……夢にも思っとらんかったじゃろ?
ええ加減にせぇよ……!」
手首を掴まれて動きを封じられた俊二の身体を、秀吾の舌が這う。
そして半ば強引に履いていた短パンを引きずり下ろされた。
「うわ、何すんじゃ、アホ……!」
「……なにって、セックス」
言うや否や、秀吾は再び昂ぶりはじめていた俊二のものを、何の躊躇もなく呑み込んだ。
「ぁう……!」
俊二の孕む熱よりももっと、秀吾の舌は熱くて、俊二は声を堪える為に、必死で歯を食いしばる。
ぴちゃ、ちゅ、と聞こえてくる音はやけに大きく感じた。
「やめろ……中に……でる……っ」
「だせよ」
もがく俊二など素知らぬ振りで秀吾は愛撫を続けた。
きつく吸い上げられたあとにゆっくりと舌先で形を辿られて、ついに俊二に限界が来た。
「く……!」
吐き出したものは秀吾の頬にかかり、白く汚れたそこを、彼は手で拭った。
堪えきれない快感に溢れ出た涙が、幾筋が頬を伝う。
その目前で、頬から流れ落ちる俊二のものを、秀吾は音を立ててすする。
「……バカ!! アホ!! 何てこと……!」
「それを俺の前で先にやったのはどっちじゃ」
秀吾の声は怒気を含んでいた。
「俺、これでも我慢しとったんじゃ。それを、ぶち壊しにしてしまって……!」
「……我慢? 何を?」
途切れ途切れに俊二が問うと、秀吾は叩きつけるように吐き出したのだ。
「お前が、好きじゃから……無理はしないように、と思ってたのに……!
こんなやらしい顔されて、我慢なんか出来るか!」

秀吾の言葉の意味を理解できずに、俊二は凍り付いた。
「手だけじゃ、足りん……最後まで、させろ」
さらに言いつのってのしかかってくる秀吾を、ほとんど条件反射で押しとどめ、俊二は尋ねる。
「好きって……俺を、か?」
「当たり前じゃ! 好きでもない野郎とこんな事するか!」

……好き?
好きなのは、俺だけじゃなかったのか?

「これまで我慢してきた分、覚悟しろよ」
耳元で囁きかけられ、吐息のくすぐったさに身じろいだ俊二にの首筋を、秀吾の舌が這う。
「頭で理解出来てないんだったら、身体でわかれ」

その後、文字通り身体に「好き」を刻み込まれた俊二は、熱を出して3日程寝込む事になったのだった。
熱が下がるまで秀吾が付きっきりだったのは、言うまでもない。

end

狂熱・1 2007/08/18

18インチの液晶テレビが、ピッチャーマウンドに立って汗を拭う投手の姿を映し出す。
肌寒い程にクーラーのきいた瑞垣俊二の部屋の中、ベッドの手前で両膝を抱き込んで丸まった門脇秀吾が、むっつりとした表情を隠す事もなくテレビを睨みつけていた。
「……このピッチャーに抑えられたんじゃ。俺が打っても、余計に点を取られたらこっちの負けじゃから」
 門脇の所属する高校の野球部は今年、地区大会の決勝まで残った所で、このチームに僅差で競り負けた。
傲慢なまでに力強いスイングで叩き込んだ門脇のホームランも、決定的な勝利の要因にはなり得なかったのだ。
「まあ、ええスイングやったんちゃうか。硬球に慣れんかった最初の頃に比べれば、雲泥の差やろ。
……また来年があるじゃろ。なんていっても、お前、まだ1年なんじゃから」
ベッドに横たわってテレビを眺めていた俊二は、ふて腐れる門脇の頭を子供扱いするように撫でた。
「……何じゃ、バカにして」
「バカだから天才扱いしてもしょうがないじゃろ」
俊二がからかうと、秀吾は口では勝てない事を自覚したのか、黙り込んで再びテレビに視線を移した。
地区大会の決勝は俊二も見に行った。半年前は確かに自分もグラウンドの中にいた。
しかし、外側から見たそこに、思った程心焦がれない自分に驚いてもいたのだ。
ジリジリと上がってゆく気温ほどには、心が熱くなる事はなかった。
酷く冷めた視線で見る門脇秀吾は、「手の届かない野球の天才」でも「幼馴染みのご近所さん」でもなく、「地区大会の決勝に勝ち進んだチームの4番」だったのだ。
打球がスタンドに吸い込まれたのを確認してゆっくりとダイヤモンドを一周する姿も、試合終了の瞬間に悔しげな表情を浮かべる様も、
まるで他人事のように見据える自分が、そこにはいた。

殆ど信仰ですらあった中学の頃のあの気持ちは、一体どこに消えたのだろうか。

『試合終了!初めての甲子園出場が決定……!!』
アナウンサーの興奮した声とともに、喜びを爆発させた部員たちがピッチャーマウンドに駆け寄ってくる姿が映し出された。
球場内のどよめきと驚喜の叫び、そして負けたチームの悲哀。
昨日門脇のチームが勝っていれば、もしかしたら今日経験したかもしれない風景がそこにあった。
「……また来年、か」
呟く秀吾の声はかすれていた。瑞垣の視線の中の秀吾の背中は何故か小さく見えた。
「でも、お前が本当に対決したいのは、あのピッチャーじゃあないやろ?」
俊二の言葉に、秀吾は勢いよく振り向く。
秀吾の顔には何の表情もない。ただ、じっと俊二を見据えていた。
「本当の勝負までは、あと2年じゃ。お前が一番、そう思っとるじゃろ、秀吾?」
俊二は起きあがってベッドの縁に座った。リモコンを取りヴォリュームを上げると、勝利チームの校歌が流れ始めた。
「今度こそ……あの生意気な坊ちゃんに勝ってみせろよ。まあもしかしたら、先に横手の方が勝つかもしれんけど」
俊二の横手野球部へのOBとしての指導は、まだ続いている。早々に飽きてしまうかと思っていたが、教えに行くたびに新しい課題が見えてくる。
問題が解決するまでは当分通う事になるだろう。俊二はそんな自分も想像していなかった。
そして。

「……慰めてやるから、来いよ」
振り仰ぐ秀吾の顔に手を添え、半ば強引に口づける。
何度か唇を舐めると、秀吾の方から食いついてきた。
秀吾は立て膝になって俊二の顔を両手で挟み、深く口づけてきた。
「ん……ぅ」
舌が絡み合い、テレビの喧噪の合間に水音が混じる。
息苦しさに顔を赤くしながら、俊二は自分からも秀吾を味わった。

最初に触れ合ったのは高校に入って最初の連休に入った頃だった。
秀吾が泊まりに来た朝、生理的反応を起こして焦る秀吾をからかうように、俊二が誘ったのだ。
子供がじゃれ合うようなもんだ、と秀吾に言い訳をしながら、昂ぶった秀吾のものに指を這わせた。
慣れない他人からの刺激で呆気なく果てた秀吾の唇に、唇を触れさせたのも俊二だった。
「子供の遊びだと思ってたらええ」
と秀吾には罪がない事を告げながらも、俊二の欲望は大人のもので、多分秀吾よりもずっと罪深い。
最初は俊二がキスをし、手で施すだけだった。しかしそれがいつか秀吾の手からも俊二に施されるようになって、
この誰にも言えない関係は断続的に続いている。

お互いに身体を晒す事もない。ただ張りつめたそこを寛げて、お互いに煽るその行為だけが、言葉もなく繰り広げられる。
指と唇で感じる秀吾の息づかいが、孕んだ熱が、俊二の中での秀吾の存在感に変化をもたらしていたのだ。

「……秀吾、お前、試合のあとってすんげーカタくなるの、知ってるか?」
「アホ、そんな事言うな……!」
二人でベッドにもつれ込み、何度も口づけを交わしながら、お互いのものを慰め合う。
もう、何度目だろうか。触れる度に動く指は大胆になり、感じる快楽も増してゆく。
触れ合った後俊二は何日も感触を忘れる事が出来ず、惨めな程に自分を慰める事もあった。
凶悪な程に熱を帯びた秀吾の感触を掌で感じながら、俊二は自分の体内の熱を冷まして欲しくて、身体をすりつけた。
そのうちお互いに言葉を交わす余裕もなくなり、俊二は堪えきれない吐息をニュースに切り替わった音声に紛らせる。

秀吾が、欲しい。

身体に触れる事が出来れば、自らの中の凶暴な情動が抑えられるだろうと思っていたのだ。
しかし、その熱に直接触れて、秀吾の吐息を感じる度に、欲深さは増すばかりで。

けれども、一度その熱量を知ってしまった身体は、秀吾から離れられないのだ。
俊二は自分を突き放そうとしない秀吾に対して身勝手な怒りを覚えながらも、快感に溺れる事しか出来なかった。

うわあ…こっちの更新は半年ぶりですよ…。 2007/08/18

色々放置プレイですみません…。
「滴る」の続きはとりあえず置いておいて、丁度今甲子園シーズンということで
ホントにちょっとしたSSを投下します。うう。

あれ? 2007/02/22

ようやくTOP絵を更新してaboutも変えてみようと思ったらまた衝動の表紙画像が表示されません…。どゆこと(号泣)
明日またいじってみます…。
滴るの続きは早ければ土曜日に。

ラスト・イニング 2007/02/19

ええと、結局昨日は風邪と花粉症のダブルパンチで5分に一度は鼻をかまないと仕事が出来ないという非常事態でした…(号泣)ぐは。
なんかここ数日ものすごい勢いでカウンタがまわっているのにちょっと驚きつつも。

…ということで、ラスト・イニングを読了しました。
自分とこの書店に夕方には入荷した本を目の前に、おあずけ喰らった犬状態で涎をたらしていた事はここを読んでいるあなたと私だけの秘密です。
たとえ店員だろうが前日入荷の本は買っちゃいけないんですよ。くうううう。ましてや立ち読みなんて出来る訳もなく。

とりあえずまだ一度しか通して読んでないので、ホントにファーストインプレッションです。

門脇と瑞垣が野球という枷を外して、小さい頃のように一対一の生身の人間として向き合えたのが、ラスト近くの練習の時間だったのではないかな、と
思うわけです。
瑞垣は野球という鎖を外し、憎悪と憧れとが交錯する綱渡りのような危うい時間を乗り越えて、今そこにある、高校一年生としての門脇の姿を見る。
門脇は「ずっと身近にいてくれた、何でもしてくれたすごいやつ」に実は依存していたのだという事を自覚し、その依存によって相手に与えていた負担を思って、自分ひとりでなすべきことを模索しはじめる。
個人的意見ですが、愛情(または愛憎)と依存は表層が良く似ていると思うのです。
巧と豪に会うまでの門脇と瑞垣の関係は実はお互いが野球の存在を通したために、親愛の情(門脇)と憎悪(瑞垣)によって互いに依存しあったものに変質した、ということを、巧と豪との対決から二人が心の奥底で感じ取って、一度二人を縛る鎖を引きちぎろうとした過程なのではないかなと解釈しました。
そして門脇と瑞垣は自分の立つ場所を再確認し、また野球との関係を考え直し、新しい二人の関係を築く本当のスタートラインに立ったのではないかと。
だからこそ、瑞垣が見上げる天藍の空は晴れ渡っているのかな、と。

なんていうか…この本で二人の関係がいつか壊れるかもしれないものから、揺らぎのないものへと変貌を遂げたのではないかな、なんて
もの凄く解放的な気分になったりして。
危うさを超えて、永遠を手に入れたのじゃないか…というのは門瑞萌え視点ですけど。
本編6巻のあの終わり方に正直「逃げたのかな」と穿った見方をしてしまった立場の人間としては、
「ラスト・イニング」は正しく児童文学としての結末を迎えたんだなあ、と実は安堵してしまったのでした。

ただ、実は最初に「野生時代」を読んだ時からずっと引っかかっている事があって。
どうして門脇に、ああいった選択をさせたのかなあと。
私の個人的好みをいうと、試合終了後、打ちのめされた表情で「原田、おまえと甲子園で対決するのを、まっとる!」と
言って欲しかったのですよ!(少年漫画の読み過ぎ)
こういう展開をしてしまった以上、夢物語でしかないわけですが。
いやまあ、横手は全国大会に出てますから、今更甲子園に出たところで原田クラスのピッチャーは出てこないと思ったからこそ、
ああいった選択をしたんだろうとは思いますが、あえて県外に出て、そこで熾烈なレギュラー争いをしつつ、ギリギリまで自分を追いつめて
とことん「原田だけではない、ずっと先の事を見据えた」野球に向かい合って欲しかったような気もします。
いや、今日ダイヤのAの新刊を読んだばっかりなのでこんな事言ってるのかもしれませんけど…。

んー、自分の日本語力が不満足なのでわかりにくい文章だなあ、すみません。
とりあえず、新刊読んで激しく萌えたのは確かです。ぶっちゃけ言うとここのところのあさの先生の新刊を読んでて
ちょっと引いていた部分があったのですが、「ラスト・イニング」で個人的には萌え復活!なので5月には門瑞の新刊が出そうです。

…てかトップ絵の更新しろよ(泣)

あ、友人が関西方面で売り子をしてくれる事になりそうなので、5月のSCC関西にはサークルを出します。
新刊もその時に出すと思います。今書いてるのとはたぶん別で。
ネタはすでに出来つつあるので、実際に完成するように頑張ります!てかその前に「滴る」完結させろ!(死)

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