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歌舞伎座新開場柿葺落 九月花形歌舞伎

2013年9月1日(日)~9月25日(水)

配役

昼の部(11:00開演)

一、通し狂言 新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)

〈花見〉

秋月大膳:十一代目 市川海老蔵
園部左衛門:六代目 中村勘九郎
団九郎:五代目 坂東亀三郎
薄雪姫:四代目 中村梅枝
清水寺住職:三代目 市川右之助
来国行:十七代目 市村家橘
腰元籬:二代目 中村七之助
奴妻平:六代目 片岡愛之助

〈詮議〉

幸崎伊賀守:四代目 尾上松緑
葛城民部:十一代目 市川海老蔵
薄雪姫:四代目 中村梅枝
松ヶ枝:六代目 上村吉弥
秋月大学:四代目 片岡亀蔵
園部左衛門:六代目 中村勘九郎
園部兵衛:七代目 市川染五郎

〈広間・合腹〉

園部兵衛:七代目 市川染五郎
幸崎伊賀守:四代目 尾上松緑
園部左衛門:六代目 中村勘九郎
腰元籬:二代目 中村七之助
薄雪姫:四代目 中村梅枝
松ヶ枝:六代目 上村吉弥
刎川兵蔵:六代目 中村松江
奴妻平:六代目 片岡愛之助
梅の方:五代目 尾上菊之助

二、吉原雀(よしわらすずめ)

鳥売りの男:六代目 中村勘九郎
鳥売りの女:二代目 中村七之助

夜の部(16:30開演)

新開場記念 新作歌舞伎
新作 陰陽師(おんみょうじ)  滝夜叉姫

第一幕 都大路
    「晴明 百鬼夜行に遇いしこと」より
第二幕 貴船山中
    「将門復活 最後の戦いと大団円」まで

安倍晴明:七代目 市川染五郎
平将門:十一代目 市川海老蔵
興世王:六代目 片岡愛之助
桔梗の前:二代目 中村七之助
加茂保憲:五代目 坂東亀三郎
平維時:初代 坂東亀寿
大蛇の精:初代 坂東新悟
蘆屋道満:四代目 片岡亀蔵
平貞盛:六代目 片岡市蔵
雲居寺浄蔵:四代目 河原崎権十郎
小野好古:九代目 市川團蔵
源博雅:六代目 中村勘九郎
俵藤太:四代目 尾上松緑
滝夜叉姫:五代目 尾上菊之助

データ

貸切日

昼の部:4日(水)、5日(木)、6日(金)、9日(月)、10日(火)
夜の部:8日(日)

筋書

愛之助丈関連
折込ポスター表:扮装写真「新薄雪物語」奴妻平
折込ポスター裏:扮装写真「陰陽師」興世王
舞台写真「新薄雪物語」奴妻平:4枚
舞台写真「陰陽師」祥仙:1枚
舞台写真「陰陽師」興世王:8枚
扮装写真「新薄雪物語」奴妻平、扮装写真「陰陽師」興世王
59ページ:「花競木挽賑」インタビュー(素顔写真、カラー)1/2ページ

舞台写真

愛之助丈は、
「新薄雪物語」奴妻平が9種類
「陰陽師」興世王が6種類(七之助丈の桔梗の前との2ショット1種類含む)

料金

1等席:18,000円
2等席:14,000円
3階A席:6,000円
3階B席:4,000円
1階桟敷席:20,000円
筋書:1,300円

その頃、他の劇場では…

巡業 西コース
新橋演舞場

雑誌

『演劇界』2013年11月号

愛之助丈関連
58ページ:舞台写真「新薄雪物語」奴妻平(カラーグラビア)
75~76ページ:舞台写真「新薄雪物語」奴妻平(モノクロ 4枚)
78~81ページ:舞台写真「陰陽師」興世王(モノクロ 6枚)、祥仙(モノクロ 1枚)
98~99ページ:「九月花形歌舞伎」の劇評
117ページ:舞台写真「絵本合法衢」(2011年3月国立劇場)田代屋与兵衛(モノクロ 1枚)
125ページ下段:「今月の歌舞伎 見どころ」 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鏡」の紹介(1/4ページ)
128ページ上段:「舞踊詩 黄金の夢」の紹介(1/4ページ)
演劇界 2013年 11月号 [雑誌]

感想

昼の部

22日に2階東座席で観劇。

通し狂言 新薄雪物語

花形勢揃いの豪華な舞台で、とてもよかった。
桜満開の清水寺で、薄雪姫(梅枝丈)と園部左衛門(勘九郎丈)が出会う。
薄雪姫は見るからにお姫様で、左衛門は侍とはいうもののちょっとなよっとした感じ。
それぞれの従者である腰元籬(七之助丈)と奴妻平(愛之助丈)は恋仲で、2人の仲を取り持とうとする。
籬は訳知り風で色っぽく、妻平は凛々しくかっこいい。
姫から後日忍んできてほしいという色紙を渡され、左衛門は承諾する。

2人がその場を去った後、団九郎(亀三郎丈)が現れ、左衛門が奉納した刀に、鎌倉将軍調伏の鑢目を入れる。その罪を左衛門になすりつけるつもりらしい。
それを見咎めた来国行(家橘丈)は殺されてしまう。
黒幕は秋月大膳(海老蔵丈)。海老蔵丈、悪役が絵になるなぁ。
ここで、姫の書いた色紙を大膳の部下に拾われてしまう。
左衛門! そんな大事な色紙を落とすなよ!!
今後の展開も含めて、色紙を書いた薄雪姫じゃなくて、色紙を落とした左衛門が全部悪いと思う。
この後、大膳の部下と妻平の立ち回りがある。(これがすごかった!)
妻平の襦袢?は首の周りに銀杏の柄がついていた。

さて、場面は幸崎邸に移り、左衛門と薄雪姫が密会… という場面に、薄雪姫の母・松ヶ枝(吉弥丈)が登場。
松ヶ枝は、2人を必ず添わせるから、親の許さぬ忍び逢いは止めるように諭す。
うーん、いいお母さんだ。きりっとして武家の妻らしく、素敵。
そこへ上使がやってくる。
それぞれの父である幸崎伊賀守(松緑丈)と園部兵衛(染五郎丈)がやってきて、全員で上使である葛城民部(海老蔵丈)と秋月大学(亀蔵丈)を迎える。
てっきり、民部は大膳が化けている悪者かと思ったら、颯爽としたさばき役だった…

上使は、左衛門と薄雪姫が心を通わせて鎌倉調伏の企みをしていると言い立てる。
証拠は鑢目の入った刀と、刃の下に心と書かれた色紙。
民部のはからいもあり、幸崎伊賀守と園部兵衛は互いの子を預かり、詮議をすることになる。

鎌倉方の詮議は厳しく、兵衛と梅の方(菊之助丈)は薄雪姫に館を出て身を隠すようにと諭す。
薄雪姫は泣く泣く、妻平と籬に伴われて館を出る。
そこへ、幸崎家からの使者が来て、左衛門の首を討って持っていくから、姫の首を討って待つようにと告げる。
息子を殺され、恨みつらみを述べる梅の方。兵衛は刀についた血を見て何か気づいたらしく、準備をすると館の奥へ入っていく。

ここからが、有名な三人笑の場面。
それぞれ、わが子を助けるために陰腹を切り、涙をこらえて笑い合う。
下手したら滑稽に見えそうな場面だが、役者さんの迫力に引き込まれた。
すごくよかった。
素直に感動したので、アホな感想があまり出てこなかった。
こういう舞台を花形でもっと見たいな。

吉原雀

桜満開の吉原に、鳥売りの男(勘九郎丈)、鳥売りの女(七之助丈)がやってくる。
数年間歌舞伎を見ているが、やっぱり踊りはさっぱりわからないので、「綺麗だなぁ」と思って見てるだけ。
前の演目の最後が重かったので、気分一新して晴れやかに昼の部が終わるのがいいな。

夜の部

新作 陰陽師 滝夜叉姫

22日に前方中央で観劇。

正直、歌舞伎というよりは“新感線歌舞伎”っぽいとは思ったが、染五郎丈が手掛ける新作(もしくは復活狂言)のクオリティはやっぱり高かった。(私的にハズレだったのは、三島由紀夫脚本の「椿説弓張月」くらいだが、アレは元の演出に忠実に演じられたそうだからなぁ…)
役者さんの口調もどこか現代っぽい感じがしたな。
エンターティメントっぽいというかツッコミドコロもそれなりにあったので、昼の部と打って変わってアホ感想全開なので、あしからず。

さて。
暗闇の中、こっそりと幕が開き、満月が浮かび上がる。
そこへ安倍晴明(染五郎丈)、源博雅(勘九郎丈)、従者がやってきて、百鬼夜行に出くわす。
出てきた妖怪?のどこかユーモラスな姿を見て、私の頭の中は「陰陽師」の世界から「ゲゲゲの鬼太郎」の世界にワープした。
そこへ颯爽と現れて去っていく謎の美女・滝夜叉姫(菊之助丈)。
菊之助丈、美しすぎる!!(が、しかし、私の脳内BGMは「ゲ♪ ゲ♪ ゲゲゲのゲ~♪」

この後回想シーンに突入。 いちおう、舞台に「○年前」みたいな文字が浮かぶ演出になっているのだが、私のアホな頭では、筋書なしで時系列を理解するのは難しく、途中でこんがらがった。
というわけで、20年前。
役人にひどい仕打ちを受けている東国の人を助けに、平将門(海老蔵丈)が颯爽と登場。
「悪役キター!」と思ったら、この時点では正義の味方だった(←おい)。
将門の親友の俵藤太(松緑丈)はひそかに桔梗の前(七之助丈)が好きらしく、桔梗の前も藤太が好きらしいということがわかる。

京の都に失望した将門は、東国に戻り挙兵する。
藤太に、朝廷から将門討伐の命が下る。
この時、不意打ちで清明が客席から現れてびっくりした。いやもう、染様オーラすごかったよ。
大きな黒揚羽が飛んできたから美女でも出てくるのかと思ったら、出てきたのはいかついオッサン=蘆屋道満(亀蔵丈)だった。が、この道満様がなかなかいいキャラしてた。

藤太は東国へ向かう途中で大百足を倒し、大蛇の精(新悟丈)から、黄金丸(この刀で斬られた傷は20年間ふさがらないらしい)をもらう。
大百足がなかなかシュールで、客席から笑いが漏れていた。
藤太が黄金丸を抜くとシャキーンという効果音が鳴り、私はここで「あ、コレ、歌舞伎じゃないかも」と感じた。(効果音が附け打ちだったら、「あ、コレ、歌舞伎だ」と感じたと思う。)

藤太は押し戻しのような衣装をつけており、六方を踏んで花道を引っ込む。え? もう六方? ここですでにクライマックス!?
…と思ってたら、着替えた藤太が花道から戻ってきた。六方で引っ込んで、こんなにあっさり戻ってきた人初めて見たわ。
舞台は風雲将門城。
門があくと、「あー、創作物の織田信長がこんな感じの衣装つけてたりするなぁ」という感じの衣装を着けた将門が椅子に座っており、その隣には興世王(愛之助丈)が座っている。
最初、「歌舞伎美人」の配役紹介には「興世王実は藤原純友」と書いてあったのだが、壮大なネタバレになるためか、途中から消されていたっけな。

それはさておき、最近、愛之助丈は悪役続きである。
以前は「悪役なんだけど、どこか人の好さがにじみ出てるような…」と思ったが、そうでもなくなってきた。
貫禄がついたのか、はたまた人が悪くなったのか…(←ファンとは思えない言い草。)
ここでの海老蔵丈はいい感じにイッちゃってて、タダモノでない感が溢れてた。
将門の妻となった桔梗の前も現れ、藤太に酒を勧める。

ここで回想シーンに突入。(回想シーンの回想シーンという複雑な状態。)
一族、妻子を殺された将門が、興世王にそそのかされ、その死肉を喰らい、人ではなくなっていく。
いやもう、この場面がグロテスク。屍累々だし、わが子の内臓引き出してるし…
こういうお芝居を見なれていないご婦人はビックリしたんじゃないか?
この時、わが子を「千代丸」って呼んでたような気がするけど、聞き間違いかな。

回想シーンの回想シーンが終わり、桔梗の前が「将門は討手を差し向けた」と藤太を逃がす。
かつて好きあっていた2人だけあって、情感たっぷり名残惜しげに別れるのだが、見てる側としては「はよ逃げろよ、追手くるぞ!」とハラハラした。
藤太は無事逃れるが、桔梗の前は興世王に殺されてしまう。
その後、討伐軍が差し向けられ、将門は命を落とす。
将門の首はふっとび、血がだらだら流れ、呪いの言葉を投げかける。

ここで、35分の幕間。
そう、ご飯休憩である。
生首から流血だらだらを見た後に、食事である。
…そこんとこ、もうちょっと考えていただけるとありがたい。

さて、出番の少ない主人公・清明と博雅は都大路で滝夜叉姫と出会う。
それから、都に奇妙な事件が起きているということで、帝から事件の解決を依頼される。
清明と博雅の場面はほのぼのとしていい感じ。白狐がすごく可愛かった。

滝夜叉姫は、将門と桔梗の前の娘で、将門と平穏に暮らすことを望んでいた。
しかし、興世王(実は藤原純友)の大望は天下を取ること。反発する滝夜叉姫を手にかけようとする興世王。
姫の危機を救ったのは、なんと道満様。道満様、見た目は胡散臭いけど、ヒーローだわ。
そういえば、将門の首を抱いた興世王が宙乗りで去って行ったけど、愛之助丈は宙乗り担当なんだろうか?
とうとう、将門が復活し、清明、博雅、藤太が駆けつける。
白狐がたくさん出てきて、五芒星となって将門と興世王を封じる場面とかすごかった。

博雅の笛の音を聞き、将門は人間の心を取り戻す。
将門は「もう十分生きた」と言い、滝夜叉姫を藤太に託し、興世王(実は藤原純友)を道ずれに、あの世へと戻っていく。
戦い終わった静寂の中、道満様がすっぽんからひょっこり現れて一言、「つまらん」。
そして、「こんな結末は好かぬ」とかなんとかおっしゃった。
いやもう、道満様と握手したいくらい同感。
てっきり、激しい戦いの末に将門の首がふっとび、「二千年先まで祟ってくれるわぁー!!」とかいうラストだと思っ ていたのに。(←それじゃ、物語が終わらない。)
最後は爽やかな夜明けとともに、幕。

場面転換のテンポもよかったし、話も綺麗にまとまってたし、面白かった。
これだけの花形がそろうと、華もあるし、見ていて純粋に楽しい。

おまけ


2階の座敷は初めて座ったけど、机があるので筋書を目の前に置けるし、掘りごたつ風で足が楽だし、東側からだと花道もよく見えて、非常によかった。


↑昼の部の幕間に、3階で買ったサンドイッチを食べた。


↑夜の部の幕間に、3階の「花篭」でお弁当を食べた。


↑お土産に買ったきんつばと、「ねんりん家」のバウムクーヘン。
「ねんりん家」には行列ができていることが多いけど、新幹線の終電くらいの時間だと、駅構内で並ばずに買える。

めでたい焼きを食べそこなったのが残念。