「雪の夜-参」




 性急な挿入は痛みを伴うものだった。

 だが、久しぶりの情人の熱に体は勝手に高まった。
 体が熱くなる。


 「アッ………アッ………アッ……」


 腰を振りながら狭いそこを押し進んでくる沖田のものを、知らず土方も腰を振って迎え。

 情欲に歪んだ情人の顔に眩暈がした。


 「ッン!―――は―――ア……、」


 根元まで押し込まれた沖田のものが土方の内部を圧迫する。

 暴れだしそうな龍を体の中で飼っているようだ。
 遠のきかける意識の狭間で土方はふと思い。


 「………きれいだ。」


 熱のかすれた沖田の声に感じた。

 感じた土方の内部が蠕動して沖田のものを妖しく誘った。

 土方を突き上げた。

 息を詰め、目を閉じて堪える土方の顔をもっと見たくて突き上げた。


 「―――ッン!」


 目を固くつぶるのと同時に土方の内部が沖田の根元を締めつけ、沖田は吐息を吐くと、深く打ち付けた。


 「―――ッアア!!」


 「覚悟して。」


 沖田が呟いたのを聞いたを覚えている。
 
 繰り返される激しい律動に。

 朦朧とする意識の中、いつか土方は意識を手放した。








 体に巻きつけられた硬い腕の感触と、背中にあたるぬくもりの中で、土方は気が付いた。

 いつの間にか単衣に着替えさせられている。


 「………気が付いた?」


 後ろから声が聞こえた。
 

 なんと言ったらいいか分からなかった。
 
 土方も感じた。

 だが。


 「………おめえ、………ずりぃぞ。」


 勝手に欲をぶつけられ、無理やり感じさせられた気がした。


 「ごめん。」


 置き去りにされた気がした。
 欲のはけ口にされたような気分がして、そうじゃないと分かっていても涙が出た。


 (もっと、お前を感じたかったのに。)


 抱きしめられて、安心感に涙が止まらなくなった。


 「ごめん。あなたが好きすぎて。」


 だから余裕をなくした、と言われて少し気持ちがやわらいだ。

 だが、己にとっても久方ぶりの交感だったのに、という気持ちがぬぐえない。


 「………いま、なんどきだ。」


 「六つくらいかな。…さっき仲居が膳を調えていったから。」


 ここに来てからちょうど一刻くらいだと沖田が言って。
 一晩中寝てしまったのではないことに、すこし、安心した。

 仲居が膳を調えている間、沖田の腕の中で眠っていたのかと思うと気恥ずかしかったが、せっかくの外泊を眠って目覚めただけではさびしすぎた。

 まだまだ沖田を感じていたかった。

 沖田の情欲の高まりは去ってしまったとしても、せめてぬくもりは感じていたかった。

 だが、そんなことを言えるほど殊勝な性格は持ち合わせていない。

 女でもないのに、いつまでも腕の中におさまっているのがおかしく思われやしないかと、土方は身じろぎした。


 「………お腹、空いた?」


 沖田の声に、


 「…いや、」


 沖田の腹が空いたのかと、腕の中から抜け出そうとして腕を掴まれ引き戻された。


 「お腹空いたんじゃないのなら離さない。」


 「…冷めるぞ。」


 「………食べたい?」


 そういうわけじゃないが、と言いかけた唇を、追いかけてきた沖田の唇にふさがれた。

 あやすような、味わうような口吸いに、頭の芯が甘く痺れはじめ、くすぶっていた花芯にふたたび妖しく火がともる頃。そっと、唇が離れた。


 「…ぁ………、」


 吐息が漏れた。

 目を開けると、すぐそこに沖田の顔があって、あわてて目をそらせた。


 「…甘い。」


 「?」


 「…あなたの吐息。」


 「…ば…、ばか……」


 匂いをかぐように顔を寄せる沖田からあわてて顔をそむけた。

 だが、体が熱くなるのを止められない。
 鼓動がはやくなる。

 己だけが盛っているようで浅ましかった。沖田に気付かれやしないかと、体を離そうとして逆に沖田の体の下に引きずり込まれた。


 「ぁ………。」


 もう、熱をはらんだ己の体をごまかせない。
 沖田にも気付かれたに違いないと、羞恥でなおのこと体が熱くなった。


 「…は、……離せよ…、」


 声がふるえた。


 「……歳さん、」


 沖田が土方の手をとって、下肢の方へ運んでいく。

 己のものに触れさせられる、と覚悟して目を固く閉じたとき、


 「ぁっ………。」


 触れさせられたのは熱をはらんだ沖田のものだった。


 「……まだ、足りない。」


 そのまま覆い被され、両肘を頭の横について閉じ込められた。

 単衣を通して、熱をもった互いのものが触れ合っている。


 羞恥と。喜びと、期待がないまぜになって呼吸が乱れた。

 きっとひどく淫らな顔をしているに違いないと、沖田のつくった狭い檻の中で精一杯顔をそむけた。


 「…抱いて、いい?」


 沖田が覗き込むようにして聞いてくる。


 「……………、」


 呼吸が乱れて声を発することができない。きっとみっともなく上擦った声になるから。

 そっと、足を絡め、下肢を押し付けて返事をした。


 沖田の唇が無言のまま首筋へゆっくりと落ちていく。

 手が袷の中に差し込まれ肌を撫でていく。


 「……ん………、」


 堪えきれない吐息が鼻から抜けていき。


 「…朝まで離さない。」


 耳元で聞こえた甘い囁きに、土方は背筋をおののかせた。




まりりさまコメント:
サイトをリニューアルオープンされる瑠璃様に、こんなものですが、
お祝いとして捧げさせていただきます。
瑠璃様から「雪を絡めて甘エロで」とのリクをいただいてがんばってみました。
が………(汗)
………シックで、大人な雰囲気の瑠璃様のサイトに妙なものを押し付けてしまった私をお許しください!!


私のコメント:
いや〜〜、こんなとっても素敵なお話を、ありがとうございますv
いただいての最初の言葉は「うっきゃ〜〜〜〜〜〜ぁ」と、雄たけびで言葉になりませんでした。
それで素敵過ぎて、つい翌日の「二人で迎えた朝〜〜」なるものを、脳内補完してしまいました。
んで、本当に魔が差したというか、そんな二人の話をお祝い返しに、送り付けちゃった私です(汗)申し訳ありませ〜〜〜〜ん(滝汗)
右側の『雪の朝』から飛べます。



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