「たのしく書こう! 小説講座1-2〜好き要素を整理しよう!〜」
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今回は「好き要素」を「層分け」したいと思います。
体系付けて+深く+細かく、「好き」を発見するヒントになればと思います。
1-1のワークで、「たくさん書きすぎてカオスになった!」な状態の人や、
「ぜんぜん思いつかない!」という人にもおすすめです。
●「好き要素」を「層分け」してみよう!
実は塔自身、こうして分析をするようになったのは最近でして。
「好き要素」を書きはじめた当初は、大体「ただの感想」=「ここが好き、ここが嫌いを語る」ばかりで、「ノリノリで書けるが、それだけ」になってたんです。
当然、分析が「身になる」感覚もなく、プロット作りや執筆の状況にも変化がありませんでした。
「どうしたらもっと、作品の深い部分を理解・評価できるようになるんだろう? どうしたらもっと、このパッションを自作品に役立てられるんだろう?」
と頭をひねった結果、考えついたのが「要素を大きく4つに分け、整理して理解する」ことでした。
●4つの分類
1. 視聴者・読み手から見て「近い・細かい」要素=1層=「人・物・事態の演出」
(a:人の演出=動きの演技、表情、台詞や声の演技など)(b:物の演出=どこで説明されるか、どこで使われるかなど)(c:事態の演出=BGM、SE、光や影や風のエフェクト、色彩、場所設定など)
2. 視聴者・読み手から見る「作品内状況の変化・流れ」=2層=「シナリオ」
3. 視聴者・読み手から見て「遠い・大きい」要素=3層=「世界観、作品の意図、テーマ」
4. 「総合」=1・2・3層が調和し響きあっているかどうか(連携できていない=無駄になっている要素はないか)
○まとめるコツ
1. 1層…目に付いた人・物・事態を書き出す。流し見していた部分やキャラを掘り下げると意外な発見があるかも。
2. 2層…できるだけストーリーを単純化し、印象深いできごとを時系列順にナンバーをつけて並べる。できればナンバーを起承転結に分ける。
3. 3層…1・2層を通して、この作品を視聴する/読むことで、何が受け手に伝わりうるかを考える。「この要素からこう解釈できる!」と示せるなら妄想でもかまわない。
(作者のコメントやインタビュー内容、ファン内多数派の意見と合わない解釈でもOK)
世界観は、「なぜこの設定が選ばれているか」を考えるとよい。
4. 総合…全体バランスを判断。とがっているのが好みならそれもアリ。バランスが好みではないがすごいと思うものを評価するのもアリ。
この分類の意義は、「シナリオと演出を別要素として切り離した」ことです。
これで「シナリオが好き」なのか「演出が好き」なのか、はたまた「どっちかが気に入らなくてもやっとする」なのかがはっきりしてくると思います。
「総合」を作ったのも大事ですね。たとえ地味でもバランスのいい作品を評価したかったので。
でも、ただ分類法を見ただけでは「???」でしょうから、作例を出しますね。
<作例1>------------------------------------------------------------------
●「天空の城ラピュタ/スタジオジブリ」分析
当然ネタバレ注意……まあ皆さん、この話は知ってると思うけど。
めちゃ長いので別ページに分けます。
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<作例2>------------------------------------------------------------------
「アニメじゃなくて、小説は? 小説書くために見てるんだからね!」という方へ。
短編小説を例にあげます。これも別ページに分けますね。
●短編集「物のかたちのバラッド」/片岡義男 から「坂の下の焼肉の店」分析
当然ネタバレ注意です。
リンクしておくので→『青空文庫「物のかたちのバラッド」/片岡義男』
これを一読してから、分析を見るのが推奨です。素敵な作品なので、ぜひ!
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さて、例を見て、いかがでしたか?
大体何をするかつかめたら、ぜひワークとしてやってみてください。
1-1で「大量すぎてカオスになった」人は「書き出したメモを3つに割り振り、整理する」。
「書けなくて困った」人は「3つの層を意識して作品を見返してみて、思いついた感想を却下せず、そのままを書き出す」といいでしょう。
では、これで「講座1」は完了です、お疲れ様でした。
「やっぱり好きなこと語ってるだけじゃん! 何のイミがあるんだよー!」と突っ込みたくなった方向けにまとめますと、「講座1」のワークは「既成作品のなかの”良いと評価したい所=自分が好きな部分”を論理的に深く分析できる”目”を育てる」ことを目的としています。
それは、自作品執筆中に「どう進んでいくべきか」と迷ったときに、力になってくれます。創作という先の見えない闇を歩くための、”先人たちが集めた過去のデータに基づく地図”、みたいな感じですね。しかも自分が抜粋してまとめたので、自分のほしいものが一番ピックアップされて載っている地図です。どうです、そんな俺得な地図、ほしくありませんか?
さて、続いての「講座2」では、今回のワークで作った2層の内容を発展させて、ついに「物語の構成」に踏み込みたいと思います。
ぶっちゃけ、塔はこれをやりはじめて、やっと小説を「アイデアの有無に左右されず、自分で展開をコントロールして書ける」ようになったので。それまでは本当に運まかせだったので、恐ろしい話です……(汗)。
塔の講座におけるもっとも重要なポイントですので、お楽しみに!