奇跡のためにクリスマスを利用するはなし
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とても寒い冬でした。
ロトゼタシアにあるクレイモランは、年中雪におおわれた冬の国。
一年の終わり、冬の真ん中、昼が一番短い日に冬至を祝うおまつりをします。
この日をさかいに太陽が春をつれてくるのです。
人々はごちそうとよくもえる薪と、"妖精がくれる"プレゼントを用意します。
用意ができない人たちにもお城の王さまからほどこしがあるので、
国中からいろいろな人があつまってきます。
カミュとマヤは2人きりの兄妹です。
海賊たちにひろわれて、海賊の船でくらしています。
でもいま海賊たちはほとんどいません。
王さまの船の"ごえい"のしごとで、ではらっているのです。
ぼうけん好きのカミュはついていきたかったのですが、
まだ小さいため、妹と港で留守番をしています。
いじわるな海賊が言いました。
「今回のしごとは大物だ。足手まといなガキは
連れて行けるわけねえよなあ」
そういう彼らも半人前なので置いていかれたことを
カミュもマヤも知っています。
そうはいっても大仕事なのはほんとうで、海賊たちと王さまは、
国へ戻るとちゅうにおおきなイカのまものがあらわれたので
船を出せずに困っていました。
このままでは王さまもほどこしもない
冬至のおまつりになってしまいます。
「おまつりのよういがないと、妖精にプレゼントがもらえない!」
ちいさい妹がそう言うので、せめて妖精にあげるたべものが無いかと
カミュは船の中をさがしました。
あったのは海賊たちが"おおしごとのまえきん"で買ったお酒と、
ハムをはさんだかたいパンだけです。
ところが船の倉庫をあさっているのを見とがめられて、
2人は海賊につるしあげられてしまいました。
妖精のぶんだと言っても、聞く耳なんかもちません。
「おれたち海賊は仲間で家族で平等なんだ。
みんなのもんのを盗む悪ガキは、
妖精に青アザできるまでブンなぐられてこい!」
今日はメシ抜きとまで言われましたが、
そんなのはいつものことです。
2人は冬至の用意をするため、船を降りて街にきました。
とはいえおかねなんかありません。
いまの2人のもちものは、
ハムをはさんだかたいパンと穴あきの頭巾、
それにカミュがこっそり集めたちいさなメダルです。
冬至をまえに街の市場はおおにぎわい。
「ここのものは、海賊のじゃないからもってっていい?」
そう聞いてくるちいさい妹に、おにいちゃんは
ひとのものを とったらどろぼう、と教えます。
だけどその目のさきには、おいしそうな
やきたてふかふかのパンを運ぶパン屋さん。
落としてくれないかな、
落ちてうりものにならなくなればもらえないかな。
そうおもっているとパン屋さんが足をすべらせ
あっあぶない!
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