奇跡のためにクリスマスを利用するはなし
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ところが雪原にでようとしたところで、
海賊たちとであってしまいました。
2人のもちものを見た海賊は言いました。
「おっ、いろいろいいものもってるじゃねえか。
おれたち海賊は仲間で家族で平等だからな。
おまえらのものはみんなのモンだ。そうだろう?」
そうして2人があつめたものはぜんぶ
海賊に"わけあたえ"られてしまいました。
いまの2人のもちものは、
ハムをはさんだかたいパンと穴あき頭巾、それに
カミュがおなかに隠したちいさなメダルです。
それでも2人は冬至のしたくのため、雪原の入り口に向かいます。
そこには街のひとたちが切った薪のあまりと
ホイミスライムがおちていました。
2人は薪もひろわず逃げようとしましたが、
まものはおきあがるようすもありません。
「うーんうん。
おなかがすいたしからだがさむいし
ひとりでおうちにかえれないよう」
そう言ってホイミスライムはしくしくと泣いていました。
「おにいちゃん、ダメだよ」
マヤはにもつぶくろに手をかけたカミュに言いました。
だけどカミュもマヤも、寒くておなかがすいているとき
どんなに泣きたくなるか知っています。
それでもカミュにはマヤがいて、マヤにはカミュがいます。
カミュが着ていた頭巾をまものにかぶせて
ハムをはさんだかたいパンをあげると、
マヤはすこしなやんで、じぶんのぶんのパンを
ふたつにわっておにいちゃんにあげました。
するとまものがおきあがり、光につつまれると
とんがり帽子のおじいさんがあらわれました。
「なんとやさしいこどもたちよ。わしは冬至の妖精じゃ。
おもいやりの心をもつそなたらに
わしから冬至のプレゼントをやろう」
妖精につれられて、2人は森の中を
てくてく てくてく あるきます。
ひはどんどん落ちて、あっというまに真っ暗です。
すると光が見えました。
葉っぱについた夜つゆの光です。
それはじょじょに大きくなって――
ひるまのおひさまのように明るくなったと思ったら
よろいかぶとに身をつつんだ
ひとりのひとがそこにいました。
「おしろの兵隊だ!」
カミュとマヤはウサギみたいにとびはねて
ものかげにかくれました。
親のないこどもは兵隊に見つかると
おしろの"こじいん"にいれられて、
まいにち本を読まされる、と海賊に教えこまれていたのです。
妖精と兵隊はもめています。
「なんじゃどうした、その恰好は、物々しい」
「そちらこそ、ここはいったいいつのどこですか」
兵隊のひとは、妖精と少し話すと
カミュとマヤへやさしく声をかけました。
「2人とも出ておいで、ぼくは妖精の友だちだ」
「ぼくが呼ばれたってことは、何かの助けが必要なはず
きっと君たちのちからになるよ」
たしかに、どこかこうごうしい感じがします。
2人はおそるおそる前へ出ました。
「海賊にとられちゃったマヤのリボン、とりかえせる?
ばあちゃんにもらったかたかけと、
おじちゃんにもらったりんごのパイも」
妖精の友だちは、人間とたたかうのは難しいなあ
何か代わりのものがあればいいんだけど、と言って
にもつぶくろをあけました。
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