奇跡のためにクリスマスを利用するはなし
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「少し脅かすか。大きな音をだすよ
2人とも、目をぎゅっとつぶって耳をふさいで」
そう言われてもこんなすごいぼうけん、一瞬たりと見のがせません。
カミュはうす目をあけて、せんとうを見まもります。
妖精の友だちが、しろいくもをまものからすこし遠ざけます。
行くよと言って前へ出て、ふしぎなじゅもんを唱えると――
バリバリバリバリ ドカーン!
大きな音と光のかみなりが、海から空へおちました。
イカのまものは大きな音におどろいて、
西のほうの霧の海へと、いちもくさんに逃げだしました。
「お兄ちゃん、空がわれちゃった!」
マヤの声に、しぱしぱする目をおさえながら見上げると
かみなりが落ちた空から、たくさんの光がふってきました。
キラキラとまたたきながら、まっくらな海に落ちていく
それはとてもきれいで、みんなくちをぽかんとあけて
ながめていました。
それは星のかけらのようでした。
「見せて!マヤにも見せて!」
キラキラ光るちいさなかけらは、妹にピッタリだと思えたので
カミュは冬至の妖精からのプレゼントだと言ってわたしました。
「お兄ちゃんはいいの?」
妖精の友だちが聞きました。
「オレはいいんだ、いっぱいぼうけんしたからさ!」
カミュのほんとうのきもちでした。
冬至の夜のプレゼントに
妖精は兄妹のやさしさをもらって、マヤは星のかけらをもらって、
カミュは空のぼうけんをもらいました。
だけど妖精の友だちは?
彼にだけまだプレゼントがありません。
イカのまものを退治までしてくれたのに!
カミュは、おなかに隠したちいさなメダルをとりだして
妖精の友だちにわたしました。
「まものをたおしたおれいにやるよ。
冬至の日おめでとう!」
1ゴールドにもならないガラクタだけど
何もないよりはいいと思ったのです。
「ええっ、メダルを5枚も!?
こんなに悪いよ、いいのかな。ありがとう」
妖精の友だちはプレゼントをとても、
とてもよろこびました。
3人はしろいくもにのって、冬の国へ帰ります。
ほんとうに、すごいぼうけんでした。
帰る道道、妖精の友だちは
空の下にあるいろんな国のはなしをしてくれました。
なにもかも乾いた暑い国、大樹にとどくほど高い山の神殿、
まものと人間がなかよく学ぶ学校……
空を飛べればどこへでも行けるのに。
きみたちはきっとこれからたくさん冒険をするよ、と
妖精の友だちは言いました。
「だけど今日のことは、みんなにはナイショだよ」
「なんで?」
「だって、星をこわしちゃったの、見つかったらしかられちゃう」
そうして話しをしているうちに、だんだんと
カミュのまぶたも落ちてきました。
「おやすみ、カミュ」
そう言って笑う顔があたたかくて、カミュは
この "冬至の妖精の友だち" は、きっと
春をつれてくる太陽の神さまなんだと思いました。
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