奇跡のためにクリスマスを利用するはなし
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そう思ったら2人とも
とっさにからだが動いていました。
「やあすばやい子たちだ助かった。
お城におさめるパンなんだ、足りなかったら
困るとこだったよありがとう」
カミュはお礼を言われて恥ずかしくなって、
パンをわたして逃げようとしましたが、
おなかがくくうと鳴りました。
「こいつのニオイでおなかを空かせてしまったか。
うりもののパンはあげられないけど、かわりに
私の弁当をあげよう。冬至の日おめでとう!」
2人はありがとうを言うと、リンゴのパイをもらって
どうぐのふくろにいれました。
冬至のごちそうを手に入れたので、市場をはなれて歩いていると
街のはずれの木の下で、おばあさんがまものと戦闘していました。
「このいたずらドラキーめ!
その織物は女神像さまの雪よけだよ、降りてきな!」
いたずらドラキーはおばあさんをからかうように、
きれいな織物を細い木の枝にひっかけていきました。
「まもののものは、ひとのじゃないからもらっていいい?」
そう聞くちいさい妹に、おにいちゃんは
まものがうばったものだとしても、
もとのもちぬし 知ってたらどろぼう、と教えます。
「困ったねえ、あれは太陽と王様の無事を祈って織ったものなのに」
おばあさんはぼやきます。
「おれ、とってこれるよ」
カミュはそう言って、するする細い木を上ります。
こんなの船のマストよりかんたんです。
あっという間に織物をとってきて、おばあさんに渡しました。
「あらまあ身軽な子たちだ助かった。
まものにとられっぱなしじゃあ、
不吉なとこだったよありがとう」
カミュはとくいげに去ろうとしましたが、
くしゅんと派手にくしゃみが出ました。
「まあまあよく見りゃそんな薄着で!
女神さまの雪よけはあげられないけど、かわりに
アタシの肩掛けをやるよ。冬至の日おめでとう!」
2人はおばあさんのやわらかい肩掛けを
その場でそうびさせてもらって、ありがとうを言いました。
さてのこりの冬至の用意は、
よくもえる薪と"妖精がくれる"プレゼントです。
カミュとマヤは2人きりの兄妹なので、カミュがマヤの妖精です。
カミュはこっそり集めたちいさなメダルを
妹に贈るつもりでしたが、売り値がつかないちいさなメダルは
妹によろこんでもらえるかどうか。
2人は街のゴミ捨て場で、よくもえる薪と
その飾りつけをさがします。
ゴールドの1枚2枚でやしないかと、
ゴミ捨て場をあさっていると、ずっしり重たい袋がありました。
赤いリボンでしばられた青いふくろ。
中には数えられないほどのおかねがありました。
「だれのかわかんないおかね! これはマヤの!」
そう言ってはなさない妹に、おにいちゃんは困りました。
たしかにだれのかわからないけれど、こんな大金なくした人は
誰かにしかられたり、たたかれたり、
ごはんをぬかれているかもしれません。
2人は教会へ相談しにいきました。
いそがしそうな神父さまは、教会のなかをあちこち探しながらも
兄妹の相手をしてくれます。
「おやおやちいさい海賊さんたち、お祈りをしにきたのかね。
落ち着かなくてすまないね。だいじなものがみつからなくて。
ああ困った困ったどこだろう。
赤いリボンでしばった青いふくろ。」
2人は顔を見合わせました。
「おれたち、神父さまを助けられるよ」
そう言って、カミュが赤いリボンでしばられた
おかねのつまった青い袋を出すと
神父さまはとてもおどろいて、そしてよろこびました。
「おお! ありがとうこどもたち、
ほんとうによく道に迷わず来てくれた!
何か困ったことがあったら言いなさい。
私もキミたちの助けになるよ」
2人が冬至のしたくがまだ終わっていないことを言うと、
神父さまは薪のかざりにと赤いリボンをくれました。
「薪なら街のはずれ、雪原の入り口にあまりがあるはずだ。
すきにもっていくといい」
妹はリボンをもらってごきげんです。
カミュはそっと神父さまに耳打ちしました。
「"あげる"プレゼントがまだないんだ」
「お祈りをしていきなさい。
そうしたらこの銅の数珠をキミにあげよう」
冬至のしたくは、なにもかもそろいました。
りんごのパイにやわらかい肩掛け、薪のおかざりと
それにだいじなひとへのプレゼントをもった2人は
よくもえる薪を取りに街のはずれへむかいます。
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