奇跡のためにクリスマスを利用するはなし
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目がさめると、そこは教会のふとんのうえでした。
「おお、よく眠れたかい2人とも。
昨日は薪をとりにいったきり、便りがなくて心配したよ。」
神父さまが声をかけました。
「礼拝堂をあけたら、長椅子できみたちが眠っていてね。
きっとお祈りをしていたから、無事で戻ってこられたんだ。
神のご加護に感謝しないと」
おひさまはとっくにのぼっていて、外はあかるく
春の日みたいに晴れていました。
「海賊たちも王さまも今朝のうちにもどっているよ。
さあ顔を洗って、ごちそうをもらっておいで」
「冬至のおまつり!」
神父さまに教えられて、2人は外へ飛びだしました。
ひろばでは、王さまからみんなに
スープや焼き菓子がふるまわれています。
カミュとマヤは、"具"のあるスープにかたいパンをつけて
それぞれ2はいも食べました。
海賊たちは、おおしごとが無事におわったので
王さまからおかねをたくさんもらいました。
これから三日三晩は飲めや歌えのおおさわぎです。
「イカのまものにおそわれて、近くの島に逃げたらよォ
今度は空飛ぶバケモノが来て、決死の覚悟で船出したら
間髪入れずにデケエ雷がイカのまものに直撃して」
「判断に遅れたら王様もろとも海の藻屑よ。
やっぱり海のことならオレたち海賊が一番だな!」
海賊のぶゆうでんにかみつこうとする妹を
カミュは必死に止めました。
昨日のぼうけんはナイショだと、彼と約束したのです。
いじわるな海賊たちは、おまつりさわぎのどさくさで
よっぱらってぶつけたのか、からだじゅう青アザだらけでした。
冬至の妖精のしわざだと、2人はこっそり笑いました。
兄妹はまだちいさかったので
冬至の妖精と会ったことも、太陽の神さまと話したことも
そのうち忘れてしまいました。
それでも冬至の夜のワクワクしたきもちは
カミュとマヤの中にずっとのこって、
2人はいつも海賊船のふとんにもぐって
次のすごいぼうけんのことをかんがえるのでした。
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