森の仲間たちin新撰組

「カバのお口」



ひょうきんな、かばさん。
それが近藤さんです。
大きな大きなお口が自慢です。
拳骨も一つといわず、二つ三つは入ります。
それが近藤さん唯一の宴会芸ですが、その大きなお口がそれよりももっと役に立ったことがありました。
それは、まだ総司が産毛に包まれていた頃です。
土方さんが已むに已まれぬお出かけで、総司を置いていかなければならないときに、発揮されます。
小さな総司のお昼寝場所は、いつもは土方さんの背中かお腹でした。
ですので、土方さんがいないと、お昼寝場所がなくなってしまいます。
そんなときの必殺技。
なんと、近藤さんの大きなお口の中が、お昼寝場所に大変身。
近藤さんは大きなお口をあんぐりと開け、総司が目覚めるまでじっと我慢我慢です。
そんな決して短くない時間、お口を開けていても疲れないとは、流石です。
しかし、そんな近藤さんもたった一度だけ、顎が外れてしまったことがあります。
それは大事な総司が、土方さんの毒牙に掛かっていた、と知ったときです。
かつてこれほど、びっくりしたことはありません。
丸一日開いた口が、塞がらなかったほどです。
しかし、総司の幸せそうな顔を見ていると、面と向かって言えません。
そこで矛先を変え、土方さんを諌めようとしたら、思いっきり惚気られてしまいました。
そんな土方さんに接するのは、長い付き合いの中でも初めてです。
いつもクールで、女なんか選り取り見取り、なに不自由なく遊び呆けていた男とは思えません。
近藤さんはそれを苦々しく思いながらも、どれほど羨ましかったことか。
あ、話が逸れてしまいました。
元に戻しましょう。
そうそう。開いた口が塞がらないとは、まさにこのことです。
なんだか馬鹿馬鹿しくなった近藤さんですが、土方さんにいっぱい釘をさすことだけは忘れず刺しまくり、二人の仲をしぶしぶ認めてあげました。
カバの大きなお口は、その大きな心も表しているのかもしれません。




あなたはさらに、誰に会いに行きますか?
           

大きな口が、近藤さんにぴったりということで、かばさんに決定!



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