森の仲間たちin新撰組

「秀つ鷹」



総司は昔、宗ちゃんと呼ばれていました。
もちろん命名は、土方さんです。
宗ちゃんは土方さんが大好きで、何処へ行くのも一緒でした。
もちろん何をするのも、総てが一緒。
土方さんの頭の上に乗って移動するし、ご飯も一緒に食べます。
宗ちゃんがお腹減ったよーと、ピヨピヨ鳴けば、宗ちゃんにも食べられるように、土方さんが食べやすく柔らかくしてくれたものを、口移しで食べさしてくれるのです。
そんな風でしたから、土方さんだけが、宗ちゃんの世界の総てでした。
しかし、大きくなるにつれ、ちょっとづつ世界は広がっていきます。
宗ちゃんも、源さんや近藤さんに出会い、自分の姿も知るようになりました。
水を飲むときにお池に映る姿は、土方さんとは似ても似つかぬ姿でしたが、おっきくなったら土方さんのようになるのだと、信じて疑いもしませんでした。
しかし、何処の世界にもお節介はいるものです。
可愛い宗ちゃんが、狼土方さんに誑かされているとでも思ったのか、それとも自分が歓心を買いたかったのか。
宗ちゃんは土方さんのようにはなれないよ。
そのぱたぱた動く翼は、土方さんのように走るようにはなれないよ。
などと、ぴーちく、ぱーちくと囀りました。
宗ちゃんはびっくりして、悲しくてなりませんでした。
だって宗ちゃんの夢はおっきくなって、大好きな土方さんのお嫁さんになることだったのです。
それなのに、宗ちゃんは鷹で、土方さんは狼だというのです。
宗ちゃんはしょんぼりとしてしまいました。
でも、めげてばかりはいられません。
鷹である宗ちゃんはお空の上では、狼のように強いのだと知りました。
だったら、狼の土方さんに似合うように、強くならなくてはなりません。
そうしたら、ずっと土方さんと一緒に、いられるかもしれないではありませんか。
そんなある日のこと、土方さんがぱっくりとお口を大きく開けました。
なんだろうと思って、でも歯並びが綺麗だなぁ、などと暢気に思っていたら、なんだか視界が変になってきました。
いつもは土方さんを見上げてばかりいたのが、今はなぜか見下ろしています。
土方さんはあんぐりと口を開けたまま固まっています。
首を傾げて、ふと自分の翼を見れば、いつもとまったく違います。
びっくりしてお池に姿を映してみれば、そこに見えるのはときどき土方さんが変身したような姿です。
ぴたぴたと顔を触ってみると、水に映っているのも同じ仕草をするので、どうやら自分に間違いはなさそうです。
なんで? どうして? と、疑問が頭の中を、ぐるぐると駆け巡っていて、土方さんを振り返ってみれば、土方さんも姿を変えて宗ちゃんを見ています。
そして、いつもとまったく違う、熱い抱擁に包まれ、近づいてくる土方さんを、宗ちゃんは目を瞑って受け止めました。
そこでふと、宗ちゃんは思いました。
これって、もしかして土方さんと、おんなじになれたのかな? と。
だったら、夢が醒めないように、土方さんに相応しいようにと、せっせと自分を磨きました。
そのおかげで随分と強くなり、土方さんでさえ頭が上がらなくなってしまいました。



あなたはさらに、誰に会いに行きますか?
       カバ    

結局、鷹のままにしちゃいました。その上、総司が最強ってな話に(笑)



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