森の仲間たちin新撰組





時は幕末。
所は花の都・京。
その京でも最強を誇る新撰組。
全国各地の猛者を選りすぐり集めてはいるが、実は世間には言えない秘密があった。
それは、人ならざる者たちが集っているということであった。
いやいや、もちろん集めた方はれっきとした人間を集めたつもりだったのだが、なぜか集まってきたのは人でない者ばかり。
もともと集めた方とて、人ではないのだから文句のつけようもないのだが。
しかし、普段は人の姿であるのに、なぜ人でないということが互いにばれたかというと。
それは酒である。
人外というか物の怪は、酒に弱いのが定番である。
大江山の鬼といい、ヤマタノオロチといい。
それなのに、新撰組に集まってきた連中はといえば、無類の宴会好きで。
ある日ある時の宴会で、屯所であるという気安さからか、みんなへべれけになるまで、酒をかっくらい酔っ払ってしまった。
すると、あ~ら不思議。
正体もなく眠り込んでいた連中の体つきが見る間に変わり、その本来の姿を現してしまったではありませんか。
こうして、朝酔いが醒めてみれば、正体を露にした人外どもが、ごろごろと転がっていたというわけで。
だが、こうしてばれてしまうと、なんとなく納得できるものがある。
それは新撰組の居心地の良さだ。
今まで何処にいても身の置き所のなかった者たちだが、新撰組はなんとも居心地よかったのだ。
人外の者たちがこれほど集まっていれば、居心地が良いのもある意味当たり前だろう。
むしろ、生粋の人間の方が、居心地が悪かろうと思える。
なにせ、ばれたのなら気を使う必要もないと、屯所の中では耳や尻尾などを隠さずに歩き回る始末だから。
かくして、新撰組から逃げ出すのは人間ばかりで。
新撰組に追われる浪士たちが嫌味を言うように、ますます新撰組は魑魅魍魎の巣窟になっていくわけだった。



さて、そんな魑魅魍魎の跋扈する新撰組。
あなたは誰に会いに行きますか?
       カバ     



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