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月吹く風と紅の王 29話、Aiha 01話、拍手UP


さりげなく放置していました。すみません。
クリスマス戦→お正月風邪→ちょっとイタリアまで、という順序のあと、なにやら気持ちぐったり状態に。
それでまた新しい話ってどうよ…、って感じなんですが、もったいなかったので…。このお話がきっかけになって、書くぞーという気持ちが戻ってきました。
近未来近未来っ、とはしゃぎながら建築物として有り得ないビルとか書いてます。楽しいです。
ある程度継続できたら18禁に切り替えたいのですが、…月吹くなどもどうにかしませんと。


拍手、メッセージをくださった方、ありがとうございました。ご心配をお掛けしてしまってすみません。
そんなこんなで、まるで何事もなかったみたいに顔をだすダメダメですが…。またのんびりお付き合いいただけると嬉しいです。

拍手御礼05

   内容:andante -唄う花- 番外
      腐れ縁のふたり。15禁。


   

 なんでこいつが。
 俺はいつも、その呟きからはじまる。


「いいか、恭吾。男女交際には節度を持て。男男交際もだ」
「征一郎って古いよなあ、そのへん。旧時代?」
 人のベッドの上で雑誌をめくりながら、鼻歌交じりで猫を片手でつついている男には反省の色はない。俺は全身の血に広がる過剰な熱量を逃すため、両手でシーツの端を掴んだ。
「うぎゃっ」
 シーツを引き抜くと面白いぐらいごろごろと男が転がる。
 右手に雑誌、左手に猫を抱えて床に顔から落ちた男は、それでも両手のものを手放さない。
「ふん」
 運動神経は人並み以上に良いのだから受け身を取るとか、逃れるとか出来そうなものだが、口ではぶつぶつ言う癖に無抵抗なんだよな、こいつは。
「にーあにあーにあ」
「来い、真鈴」
 飼い猫には悪いことをした。
 ふわふわの毛並みを持つ白猫真鈴は、俺が腕を出すと甘えた声を出しながら肩に飛び移ってくる。恭吾につつかれても知らん振りをしていたが、さすがにいきなり中空に持ち上げられて驚いたらしい。シーツを引き抜いたぐらいなら、ひょいと飛び上がって難を逃れるぐらいの機転の良さを持つものの、恭吾の素早い動きには対応できなかったのだろう。
「ああ、真鈴ちゃん…」
 名残惜しげな声を出した男を見て、俺は小さくため息を吐く。
 さっさと床から起き上がれ。みっともない。まあ、俺が落としたのだが。
 隣人で幼馴染み。親同士が仲が良くて、子どもの頃俺たちが使っていた塀の抜け穴にはご丁寧に表札まで付いているぐらいのばかばかしいぐらい親しい間柄である。
 この男は子どもの頃からたらしだった。
 忘れもしない。あれは幼稚園の遠足の日。
 もも組のくるみちゃんとりんご組のはやしさん。
『くるみちゃんもはやしさんも可愛いよ。だからけんかしないでね』
 この男と手を繋ぎたいあまりに、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、殴り合い蹴り合ったくるみちゃんとはやしさんは、もはや遠足どころではないひどい有り様だった。
 そのふたりのおでこにちゅっとキスをして場を収めた、若干5才。
 彼女たちの王子さまだったらしい彼の微笑みは効果絶大だった。ぽうっと頬を染めたふたりは、大人しく列に戻ったものである。
 両手があるんだからふたりともと手を繋げばよいものだが、必ず2列になって進まなければならないため、ひとりの席をふたりで争うことになったのだが、もともとどちらも恭吾とは別に手を繋ぐ相手がいた。
 手持ちぶさたに顔を見合わせていたもも組とりんご組の男ふたりは憧れのくるみちゃんとはやしさんと手を繋げて嬉しそうだ。
 そんなに重要なことか?たかが手が。
 その頃から少々冷めた考え方をしていた俺は、その一部始終を呆れた眼差しで見つめていた。
 誰と手を繋ごうが、そんなものあっという間に終わってしまう。実際、徒歩10分で着くぞうさんの森に辿り着くなり、彼女たちはあっというまにちりぢりになって、誰かと手を繋いでいるなんて面倒でやってられない、そんな雰囲気さえ見せたのだから。
 ちなみに両隣から腕をしっかり握られて引っぱられるという、古典的拷問を受けていた男自身はけろりとしたもので、妙ににこにこしていた。
 まあこいつの笑顔っていうのはなかなかくせ者で、こいつなら仕方ないと思わせる気安さと愛嬌がある。まあ、ようやく無事、入り口を通ろうとしただけで発生した問題も解決して、一安心だ。
 順調に他の園児たちが手を繋いで入り口を抜けていく。
 その中で動こうとしないのが先ほどの問題児がひとり。そいつはぬっと片腕を伸ばした。俺の方に。
「せいくん。手ぇ、つなご」
「………はあ?」
 おまえは先生の説明を聞いていなかったのか。
 隣の女の子と手を繋ぎましょうね、って言っていただろうが。
 俺は男だ。おまえの手なんかいるもんか。
「おれ、せいくんがいい」
 が、を使った。がを使ったぞ。
 保育園児にして日本語の深くて広い使い分けを覚えている俺は、そのてにをはに鋭く反応した。
 どうして、が、なんだおまえは。
 もも組とりんご組の憧れの人をさくっと振った癖に。
「なんでおれがお前と手をつなぐんだよ」
 と、俺もはっきり言ってやったのに、ぞうさんの森でも、ライオンの丘でも、こいつは俺の手を離さなかった。
 その間中、俺の胸は妙な不整脈を訴え、息苦しさと喜びでごちゃごちゃだった。どうぶつを見て喜ぶような歳でもなかったが、きっと見られて嬉しかったのだろうと思うが、どうしてあんな動悸がしたのか今でも不思議だ。
「おーい、征一郎~、大丈夫かあ?」
「大丈夫だ。…いや、何しているんだ、おまえは」
「真鈴ちゃんごっこ」
 俺の髪をかきまわし、ぐちゃぐちゃにするのがか?
 それともおまえの膝に俺を乗せているところがか?
「恭吾。覚悟は出来ているな?」
「いいえ?」
「そこになおれ!」
 成敗してくれる。


 せっかくの休日に見たくもないこいつの顔を見ているかといえば、俺が呼び出したからだ。
 先ほど恭吾がめくっていた雑誌をベッドの端に座ってめくりながら、俺はそっとため息を吐く。まったく内容が頭に入ってこない。
 ベッドの上であぐらをかき、新しい雑誌をめくる幼馴染みの顔を俺はねめ付けてやる。
「とにかく、浅く付き合う相手に深い手を出すのはやめろ」
 こいつは先日もまた下級生に手を出し、それより少し前に出していた下級生同士が揉めるという事件を相も変わらず引き起こしてくれたのだ。
 揉めた彼らはことの張本人であるこいつの取りなしを受けると、なぜかお互い仲が良くなってしまって、こいつのことなどどうでも良くなったようだが、原因にはひと言注意をしなければいけないだろう。
 いい加減いつもいつも、面倒ごとばかり引き起こす男だが、幼馴染みではある。放置していて他人様に迷惑をかけていては面目が立たない。
「みんなかわいいからさ、つい、こう、盛り上がるでしょ、ふつう」
「知らん」
「征一郎はさあ、顔も悪くないし、眼鏡なんてお約束アイテムをつけなくても充分冷ややかな雰囲気があって格好良くて、もてもてなのに…なんか固いんだよな」
「…それがどうした。余計なお世話だ」
「蓮みたいな洗い立てのシーツ、真っ白ふわふわです、みたいなのを持てとは言わないって。でも損していると思うんだよ」
「損?」
 おまえといること以上に人生の損失はないと思う。
「わ、ひどい」
「何も言ってない」
「言ってる言ってる。顔が」
 それがひどい言いようだと思うが。
 そう思ったが、口には出さない。しかし読心術でもあるのか、まあね、と簡単に頷いた恭吾の表情はずいぶん大人しい。
 明るくはっちゃけすぎるところもない、静かな顔だ。こういう顔も人を魅了するんだろうと思わせる、雰囲気のある顔だった。いつもこんななら大人しくて良いが、それはどれでこいつらしくもない。
「征一郎自身はすごく可愛いところがあるのに、カチカチでガチガチの鎧付きっていうか。でもそんなふうまでして身を守る必要なんてないだろ?」
「…………っ」
 どうも時々妙に鋭い恭吾の物言いは胸に突き刺さるものがあった。
 兄弟同然に育ってきた俺たちはお互いの性格など、隠しようもなく知られている。ここでの俺はなるべく穏便に話を受け流すべきだったんだろう。だがとっさに、そうすることができない。
「誰が…可愛いって?」
 問題はそこだ。
 しかしこの切り返しはまずかった。この手の話題は良くない。何のてらいもなく恥ずかしい台詞を吐ける男。それが一ノ瀬恭吾であることを俺は忘れていた。大失態だ。
「どんなに不機嫌でも真鈴には甘い顔を見せるところだとか、冷ややかさを装いながら、相手を立てようとするところとか、お気に入りのお菓子が出た時に無意識に笑みをうかべているところとか、ぜんぶ可愛いって」
「…………」
「…………」
「まあ、それはともかく」
 なんでこう失言はすぐ我が身に返るのか。
 俺の失言はともかく、重要なのは恭吾、おまえの不特定多数の異性及び同性交遊。
 危うく話をすり替えられるところだった。
 俺は呆けそうになる意識を叱りつけて話を戻す。
「だいたいな、おまえは良いかもしれんが、中には本気になる者だっているだろう。そういった者を悲しませるつもりか?」
「そうならない子を選んでるって」
「本命ができたらどうするんだ」
「うーん、どうするって?」
「浮ついたおまえを信頼するまでに時間がかかるだろうし、おまえだって思い悩むんじゃないのか」
「相応しい人間じゃないから?」
「そこまでは言わないが、…そう誤解されることにもなりかねない」
「それは大丈夫。だって俺のこと分かってくれてる」
「いや、だから…?、……」
 俺は自分の顎を指でつまんで、ぴたりと口を閉ざした。
 今の話からすると、もう本命がいるってことか?
「………、なら、尚更……」
 知らなかった。本命がいるのか?
 俺は妙な戸惑いを覚えて言葉をつまらせる。
 どうしてこんなふうに言葉が詰まるのか分からない。
 こいつに本命がいるというなら、喜ぶべきことだ。
 今はふらふら、ふらふらと蜜を求める蝶のように落ち着かない腰も、次第に座ってくるってことだろう。歓迎こそしてそれを拒むいわれはない。
 そうに違いないというのに、俺の気分はざわついて困ってしまう。
 ここでうまい冗談など言えれば良いのだろうが、何もうかんでこなかった。
「わー。どうしてそこで黙っちゃう?」
「どこで黙ろうが、俺の勝手だろうが」
「な、征一郎。俺の本命知りたくない?」
「…………」
 朝から晩まで、家でも学校でも一緒にいるのに、俺はこいつの本命が誰なのかちっとも分からないなんて、幼馴染みの沽券に関わるだろうか。
 C組の美少女とはもう分かれたようだし、B組の美少年はどうだったろう?
 こいつが今まで、あるいは今も付き合っているだろう相手なんか多すぎていちいち思いうかばなかいのが正直なところで、考えれば考えるほど苛ついてくる。本当に本命なんかいるのか?つい先日も下級生に手を出した挙げ句、もう興味もない男が?
「いや、別に」
「教えてあげるって」
 妙に甘ったるくて優しい笑みをうかべた恭吾が俺にのし掛かってくる。
 どうして本命を言うだけで俺をベッドの上に引き倒し、あまつさえ俺が起き上がれないよう自分の体を重しとして使うのか。
「どけ」
「どかない」
「重いぞ」
「そりゃ、征一郎より筋肉在るしな。な、征一郎。これいやか?」
 いやに決まっているだろう。
 その文句がこいつの口の中に奪われる。
 ………これは、キス?
「き、…きょう、ご…ッ」
「うっ、下半身に来るなあ。おまえの声って」
 ふくらみを押し付けるな!
 もう1度唇を合わせてくるな!
「離せ…ッ」
 のし掛かってくる体を押しのけようとするが、びくともしない。
 そうだった。
 こいつは俺の攻撃をいつも避けもしないが、実際には俺よりずっと鍛え抜かれた体と優れた格闘センスを持つのだ。
 頭の中にかっと血が昇る。
 全身の血が煮えたぎるような、激しい怒りで目の前が白くなった。
「おまえの本命に密告してやるぞ!」
 それが誰かは知らんがな。
 堂々と高圧的に言いのけると、こいつは妙にきょとんとした顔になり、ぷっと吹きだしてから、懲りもせず俺の唇をついばむように浅い口づけを繰り返した。
「俺が好きなのはあんただよ」
「…はあ?ばかも休み休み言え」
「だから、あんた。遠見征一郎が本命だって言ってるわけ」
 冷ややかな眼差しにかけては誰にも負けないと自負している俺?
 不本意ながらいじめられたい先輩ナンバーワンの俺が?
「好き?」
「そうだとも」
「おまえ…まだ、保育園の頃の好きとの区別がつかないのか?」
「いや?その頃からすでに俺はあんたを愛してたぜ?」
 いや、それは勘違いだ。
 そうに違いない。
 だというのに、真っ白になっていた視界がどきまぎと赤く染まる。
 どう。どういうことだ?
「ふ。服を脱がすな、おまえは…っ」
「しちゃおうぜ。告白ついでに」
「ついでにするもんじゃないだろうが」
「ずーっとしたかったんだ」
 俺は服を脱がされ、再び深い口づけを受ける。
 口だけでなく、首筋から、胸もとから、淡く兆した前も、全て。
「きょ、…恭吾…っ」
 丹念に解した後ろに、熱の固まりを押し付けられる。
 あんなに長く一緒にいたのに、体の中に圧し込まれ、挿れられる圧倒的な存在感も全身を融かすような熱量も、未知のものだった。
 俺は喘がされ、大きさに呻き、迸りで白く体を汚したが、こいつとするその行為がそれほど嫌でもないことを知った。ことを終えた後にきちんと殴っておいたが。物事には手順とか順序とかあるだろう。いきなり襲うな。

「おまえはまたどうしてそう、世儀に構おうとするんだ」
「いやあ、だって可愛いからさ」
「だってじゃない」
「でも愛しているのはおまえだけだぜ?」
「………っ」

 ああ、そうだとも。
 それを言うのがこいつでなければ許さない。
 俺はいつもこいつに気持ちを乱され、こいつのひと言で収まる。
 俺もまた、こいつにたらされたひとりだと言うことなんだろう。
 呟きは声なく胸の中で呟かれる。
 
「……俺も」
「え?何か言った」
「何でもない!何も言ってない!仕事をしろっ」
「ええ~?」

 のし掛かるな、耳に息を吹きかけるな、世儀に迷惑をかけるな、やたら他人をたらすな。ああもう。
 なんでこいつは、こうなんだ。
 俺の今日もまた胸の中で埒もないことを呟く。
 好きになった方が負けだと世間ではまことしやかに囁かれるが、こいつとの場合。
 恐らく生まれたその日から、どちらか先も後もなく。
 こんなふうになったのかもしれなかった。


虫と魚とレアアイテム

月吹く風と紅の王 28話UP


小さな嵐、吹き荒れています。


久しぶりで、更新に妙な違和感を覚えています。
その間に拍手&メールをくださった方々、まことにありがとうございます。ありがたいやら申し訳ないやら。
こんなに遅れたのは……、あれです、どうぶつの森が…。
Wiiで出たのが欲しいのですが、咎狗はテキストが潰れてよく読めなかったぐらいのみにまむテレビ。とてもWiiは楽しめない。
その前にそういえばDSのどうぶつ森、虫魚のフルコンプがまだだったな、と引っ張り出したのが、いけません。虫取り魚釣りに血道を上げています。あんまりにも血道をあげるので、封印したんだったな、と遅ればせながら思い出す次第。


検索登録のバナー変えてみました。サイト模様替えするほどの体力がないので、気分転換に。もし新しいサイトだ、とか誤解させてしまっていたら申し訳ないです。


   


返信が遅れてしまって申し訳ありません。異世界な感じを気に入っていただけまして幸いです。
基本的にファンタジーが好きなので、これからもそういった感じで更新していきたいと思っているのですが、よろしくお付き合いいただけますと嬉しいです。拍手ありがとうございました。

   


返信が遅れてしまって申し訳ありません。更新も遅れてしまっていて、重ねて申し訳ない感じとなってしまって申し訳ないです。
なんとかがんばっていこうと思っておりますので、のんびりお待ちいただけたら幸いです。拍手ありがとうございました。

拍手御礼04

   内容:andante -唄う花- 番外
      一所懸命、お守りしています。


   

 我々は第五警護隊。
 通称、蓮様お守りしますの会。


 我々は要人警護のスペシャリストとして厳しい訓練を受け、その中から特に選び抜かれた精鋭として、世儀家の主要人物の警護にあたっている。
 蓮様ご誕生時に結成された第五警護隊は、男性のみで構成されている。皆かなりの蓮様フリークを自認しているが、我々の行動は常に秘密裏に行われていた。
 なぜなら蓮様は、己の素性をお知りにならないからである。

 1410。
 蓮様は学校帰りのスーパーでお買い得商品を吟味中。
 蓮様がお通い中の公立中学は本日昼過ぎまでの授業で、部活に所属されていない蓮様は制服姿のまま買い物に来られていた。
 "WからRへ。蓮様がお買い物メモを落とされた。至急見やすい位置に配置せよ"
 "了解"
 陳列棚の物陰に落ち込んだ紙切れを素早く確保し、蓮様が気づいて戻ってこられる瞬間、的確な位置に置く。
 これは要人警護の仕事ではない?
 いやいや。
 第五警護隊にとっては重要かつ重大な任務。これないがしろにするべからず。
 やむにやまれない場合は、変装済みの隊員が蓮様にお声をかけることがゆるされる。我々にとっては緊張する瞬間だった。
 もし今回がそうなら、「これ、落とされませんでしたか?」になるだろう。
 この上ない至福の瞬間である。

 我々は日陰の集団であり、表だって動けないだけではなく、その存在を知られるわけにはいかない。
 そのことに不満はないが、小憎たらしい相手はいた。

「あら、第五の皆さん。ご精が出ますこと」
「…どうも」
 男ばかりのこちらに対し、向こうは女性のみ。
 すらりとしたパンツスーツ姿の女性たちは、白いボックスカーに乗り込んだ我々を見て、艶然とした微笑みをうかべた。
 入ったばかりの若い隊員などはぽおっと彼女らを眺めて、誰ですか、なんて聞いてくる。
「三ツ原家警護隊の皆さんだ…」
 選考基準は顔と言われるぐらいの美女揃いだが、油断してはならない。うっかり隙など見せたら、頭からばりばり喰われかねないからである。蓮様護衛の座を死守すべし。
「あら、怯えた仔羊ちゃんがいるわ。かわいいわね」
「…………」
 こっちを見て言うな。誰が仔羊だ、誰が。
 というか口に出していないのに。…そんなに分かりやすい顔をしていただろうか。気をつけねば。
 彼女たちのつよみは、何と言っても蓮様に面識があること。
 女系優先の三ツ原家ではとにもかくにも女がつよく、彼女たちもまた同様である。
 色々あって女の園である桜朱恩に通うことになった蓮様は、三ツ原家のご息女と行動を共にされることが多くなった。
 当時の蓮様はちょっとひと言では言い現せないぐらいのお可愛らしさだった。
 こぼれ落ちそうなほど大きな瞳いっぱいに涙をうかべて、従姉である三ツ原家のご息女の後について歩く様や、にこっと笑って、ちょこまか跳ね回る様など、永久保存版、癒しの図。
 ひとりでおつかい、蓮様編。
 など、ちょっとひと言では言えないぐらいの感動巨編である。
 今でも充分愛らしくお綺麗な蓮様は、かつてはよりいっそう純粋かつ無垢でいらっしゃって、従姉を守る彼女たちに対しても、尊敬と憧憬がこもった瞳を向けていた。
 しかしこればかりは、出来ることなら声を大にして言いたい。
 違うんですっ、危険なんです!と。
「あ、護衛のお姉さんたちだっ。こんにちは。ナギ姉待ち?」
「あら、お早いお戻りでしたわね」
 蓮様!
 我々は三ツ原家警護隊を壁にしながら速やかに移動を開始。
 意識は常に蓮様の周囲に張り巡らせているから、多少離れても会話ははっきり聞こえた。音声良好、改良に改良を重ねた集音マイク異常なし。
「ナギ姉ね、白か朱色かで迷っているの。どっちも似合うと思うんだけど」
「それは重大な問題ですわね。蓮様、今日は陽射しがきついですし、外ではお帽子をかぶりませんと」
 少々難しいお年頃になってきた蓮様のお気持ちを損ねず、さっと帽子をかぶせてくれたことにほっとしながら、日陰に連れて行く手際の良さに、さすがだとも思う。
 我々もあちらも子守りに関しては一家言あるが、直接的に関わり合うことが多い彼女たちの方が、言葉巧みに蓮様を誘導できる。
 今日は三ツ原家のご息女に付き添い、三ツ原家の車で買い物に出かけられたので、正直我々の出番はないのだが、それならお任せします、などど言っては第五の名が廃るというものだ。
 我々は蓮様がお休みになれるまで、いや、寝ても覚めても、つねにお守り続けます。

 あれから数年。
 今、蓮様は世儀家に入られ、我々とも直接言葉を交わされるようになった。
 世儀家に入られても隠密行動を続けるつもりであったのだが、蓮様は屋敷中を駆け回って我々をお捜しになったため、恥ずかしながら自己紹介をさせていただいた。
「レッドです」
「ホワイトです」
「ブルーです」
 我々のコードネームは色である。
 本名をお伝えするわけにはいかない、と言ったところ、蓮様は可愛らしく小首を傾げて、
「じゃあ、赤井さんと白川さんと青野さんね」
 と、その他全員の名も決めてくださった。
 全員の胸が感動に打ち震えたのは言うまでもない。
 だが、蓮様は我々が蓮様が世儀家に入られた時から結成されたと思われているようだった。それも無理はない。我々はずっとそっとお守りさせていただいてきたのだ。
 上手にハイハイされるところ、はじめてお立ちになったところも、我々は影ながら見守らせていただいている。
 蓮様の存在に我々がどれほど癒され、力づけられてきたのか。
 それは1度語り出したら止まらなくなるぐらいだ。


 第五警護隊。
 我々は数々の困難に立ち向かい、打ち勝って、これからも蓮様を守り続けることを誓おう。


 どうか本日もお健やかに。
 我々は常に蓮様のお側に付いています。
 陰に日向に。
 いついつまでも、お守りさせて下さい。

彼と彼女

月吹く風と紅の王 27話UP


狭間の世界。今回の場合は、どっちつかずの場所、といった感じです。
ここであってここではない場所。


新しく登場した彼は、ややマーメイドな感じです。でも耳だけ。足はふつうに2本。
今回の拍手御礼は同じく月吹く風より。
ふだんから思いつきで行動していますが、…何か御礼用にと思って書きだしたらこれでした。前々から彼女のことは書きたかったのですけれど、ちょこっとだけ触れたような感じになりました。
顔は似たけど中身は殆ど似なかった彼らです。

伝播する焔

月吹く風と紅の王 26話UP


精霊にも色々いるので、その性質として、あんまり余所の場所に行かないもの、あるいは行けないものもあります。でも木の精霊だからその木の傍にいなくちゃいけない、というわけでもない、そんな感じです。


25話をUPしたあと、それ以降の話をまるごと書き直しました。
ややシリアス度が下がりました。(当社比)
どうもマルフィルがいけないんだと思います。彼がみんなをお笑いに引っぱっている気が。それはそれで楽しいのですが、どうにもお色気部分が吹き飛びます。
鬼畜…鬼畜って…?で申し訳ないのですが、今しばらくマルフィル感染版で進む…予定です。

楽々うどん

月吹く風と紅の王 25話UP


いじられキャラっぽいですが、けっこう精神的にもつよいです。
そんな城主が続いて登場中。


晩ご飯に、釜玉うどんを作って食べました。
ヴァンプ将軍(天体戦士サンレッド)のはお手軽なものが多いけれど、筧さん(きのう何食べた?)はすごすぎる…。というかあの新刊、何という料理本。
もともと料理はあんまりしないです。お話の中では作っていただいていますが、作らないけれど食べたくはなるわけです。(←どうしようもない人)

あ、釜玉うどんは美味しかったです。そうか、こんなふうに食べられるのか、と少しびっくり。卵かけご飯うどん版というお手軽さなので、面倒な時はこれにしよう…と思いました。
関係ないですが。ふっとここのカレンダーを見ておののきました。何ですかこのビンゴ状態…。(斜めに揃えば良いかな、な具合)ううう…更新がんばりたいと思います。

しぱしぱ、しげしげ、しみじみと

月吹く風と紅の王 24話UP


城主と一緒に森の中。
ルシエたちは多少の夜目が利きますが、夜の生きものではないので夜は危険です。
夜飛行もよくしていたルシエですが幻獣の森は特殊な場所なので、冒険には行っても夜は避け、普段は近付きませんでした。


久々にコンタクトレンズを入れたら、何やら目がしぱしぱ。アイボンをしてみましたが、目が赤いです。ウサギの目だー、と鏡をしげしげ覗き込んでは、おおっ、と。放置しすぎて霞み、活字が追えなくなったりして、しみじみ視力に依存しているなあと思ったりです。


拍手、メールありがとうございます。返信不要の方もありがとうございます。好きとおっしゃっていただけると、胸がほっかり嬉しいです。


   


元気に楽しくやっております。優秀な人…どなたのことでしょう。唄う花のメンバーでよろしいのですよね…?護衛ず秘書ずは優秀なんですが1本なり数本なり抜けており、でも彼らなりに楽しくやっていたりです。拍手ありがとうございました。

   


第五警護隊を気に入っていただきまして、ありがとうございます。お姉様方も気にしてくださって嬉しく。ちょっとリアル忍者なノリのある彼らですが、いつか本編にも登場できたらなと思います。テンションが高すぎる彼らはなかなか本編に入ってくれなかったりなのですが、少し大人しくなっていただければ…きっと、たぶん。拍手ありがとうございました。

拍手御礼03

   内容:月吹く風と紅の王 番外
      彼らの務めのひとつ。ほのぼの。


   

 花青宮の一部ではあるが、一の宮、二の宮、と分けて呼ばれるそれぞれの住まいは独立した営みを行っている。
 花青官だけでなく、料理人や洗濯女に至るまで、宮内の仕事に携わるものはすべて専任という形をとり、他の宮とは行き来しない。
 大抵のことが共有場所である本宮でなく、人形が住む宮内で済むようになっていた。
「ツィーツェ花青補。今月の収支です」
「ありがとう」
 部下から書類を受け取り、ツィーツェは書きものをするときにだけかけている細い縁取りの眼鏡を指先で直した。
 人形の世話以外にも、花青官の仕事は多くある。
 そのひとつが宮の管理で、修繕や調度品の買い換え、立ち働く人員の調整など、こまごまとしなければらないことが山積みになっていた。
「やはり人形がひとりだと、楽ですね」
 ツィーツェは届けられた収支報告書を見て、独りごちた。
 ちょっと他の宮では考えられないような、簡潔で余裕のある内容である。
 一の宮の主人、第1王子エルシェリタは私費で人形に希少な鉱石や装飾品を買い与えるし、人形が欲しがるものといえばせいぜい本か術用の気石。
 どこに予算を使えば、と少し悩むぐらいである。
 むろん、ないよりはあった方がいいので、無駄なくきっちり使うのがツィーツェの方針であった。少々溜め込んでいた余裕分もあることだし、そろそろここで思い切るべきかもしれない、とツィーツェは思う。
「やはり、寝具でしょうね」
「花青補。決定ですか」
 部下らが一斉に視線を向ける。
 ツィーツェは重々しく頷いた。
「模様替えをします。至急手配を」
「はい!」
 勢い余って破顔する勢いで、花青官らははりきって応える。
 彼らにとって、人形を飾り立てるのがいちばん楽しいひとときだが、宮の主人を愉しませ、より人形を美しくさせることなら、なんだって楽しいのが実情であった。


「気をつけて、床に傷など付けないように」
「カジュリッティドのランプが届きました。どちらに置きましょう」
「もう少し右へ、あ、寄りすぎです。もう少し左へお願いします」
 主寝室に大勢の人々が忙しく出入りしては、あれやこれやと次々ものを運び込む。
「なに…してるの」
 午睡あけで眠そうな顔をしながら扉の前に立つ人形に気付き、ツィーツェは天蓋の幕を張り替えていた手を止めた。
 寝癖でやわらかな月色の髪がほつれているのを、胸もとから取り出した櫛で梳き、午睡衣の乱れを整える。午睡から目を覚ましているのは気付いていたが、まさかここに足を運んでくるとは思わなかった。
 ルシエはされるがままだ。ツィーツェはうとうとと瞼を落とすルシエを両腕で支え、部下に目配せをしてその場を離れた。
 昨日もずいぶんと長く主人のもとにいた人形は、睡魔が拭いきれずにふらふらしているので、目が離せない。どうも夢うつつで歩いてきたらしい。
「ルシエさま。申し訳ありません。うるさかったですか?」
「ん…んん?……」
 もごもごと口もとではっきりしないことを言っている。
 これはもう1度、寝せておいた方がよいと判断して、ツィーツェはルシエを午睡室に連れて戻る。
 寝惚けているときのルシエはいつも以上に無防備でいとけない。
「花青補。ルシエさまのそばにはわたくしが」
「頼みます」
 鈴白湯に体力の回復によいセキリーシアを混ぜて飲ませるよう指示をし、部下のひとりにその場を任せる。
 模様替え中の部屋に戻りながら、ツィーツェは主人宛てに伝文を送った。
 人形の体調を整えるため、休息を求める簡潔な文章である。
 夜伽のお召しは主人の意向がすべてと思われがちだが、そこは花青官も一枚噛んでいる。これではつとめは果たせないと思われれば前もってその旨を伝えるし、無理なお召しは断った。
 複数人形がいる場合、誰それを夜伽に呼ぶようにとは指示しないし、それはしてはならないが、夜伽相手を花青官側から選ぶことはある。
 人形は主人の所有物だが、人形を管理するのは花青官である。
 花青官は王族であっても自由に出来ない。花青官は主人の指示を拒む権利を有しているのだ。
 ツィーツェとエルシェリタのやりとりは思念文という、特殊な伝令法を使っているので、伝令士は通さない。直に会話はできないが、思念文を受け取った者はすぐにそれを感じ取ることが出来るし、好きなときにそれを読むことが出来る。
 すぐに返信が戻ってくる。
「それは少し、おおげさというものです…」
 羅列された治療法やら健康法やらに一応すべて目を通してから、ツィーツェはその気持ちだけありがたく受け取る。
 病ひとつあまり得たことがない第1王子は人形が不調だと聞くと、あれやこれやと考えずにはいられないようだった。
「花青補。ルシエさまはお休みになったそうです。ですが、少し気になることを…」
「気になるとは。なんです」
「はい。花砂糖菓子はもういやだ…とか」
 恐るべき主人と人形である。
 花砂糖菓子は滋養があっていいので今日のおやつに出すのはどうだろう、と今し方主人からの返信で届いたばかりだった。
「あまりお好きではないようですね。違うものを用意させましょう」
「はい」
「あ、お待ちなさい。そちらの敷物は、そう、そちらのものを使いますから」
 出来上がった主寝室はツィーツェら、花青官たちの満足のゆくものだった。だが、部屋の主人らがここを使うのは、もう少し後、夜になってからである。


 湯殿に隣接した小部屋で花青官たちはいつも念入りに人形の手入れをする。
 手のひらで丁寧に圧して血の巡りを良くしながら、香油を丹念に塗り込み、肌に馴染ませる。
 月色の髪には特別に取り寄せた髪油をたっぷりまぶして、熱く蒸らした布を巻いたり、指先で頭皮を揉み込んだりと、とても時間がかかった。
 湯を終えても、爪を整えたり髪を梳ったりと、人形の身には色々と必要なことがある。
 ルシエはこうした手入れの時間が苦手で、やれくすぐったいの疲れたのと文句を言いつつ、いつもうとうととまどろみ出すのだが、今日も例によって手入れの最中に眠り込んでしまったルシエを、ツィーツェはやさしく揺り起こした。
「ルシエさま、終わりましたよ」
「うー、ん…ん…。本…読みかけの本…」
「いけません。今日はもうお休みになりませんと」
 放っておくと夜更けまで本にかじりついているので、ツィーツェは主寝室に本を持ち込ませないようにしている。
 人形の美貌を守るためにはなるべく早寝早起きをさせ、栄養の整った食事を食べさせて、適度な運動と、たっぷりの睡眠をとらせることが大切だ。
 突き詰めすぎると夜更かし過度の運動、深夜の美食など、主人のお召しほど厄介なものはないことになってしまうので、ある程度ほどほどにしなければならないが。
「さ、まいりましょう」
 やんわりと、しかし文句は聞かないつよさで促し、ツィーツェは人形の手を引いて進む。
 華奢な手のひらがツィーツェの手に乗せられて、ほんのりと温もりを伝えた。
 きれいに整えた爪先と、ほっそりとした指。
 ささくれはもちろん、傷ひとつない手は花青官たちがいちばん心を込めて手入れを施したものだ。
 人形になったばかりの頃、渡り風のひとりとして、水仕事は勿論、繕い物や狩り、家屋の設営などなんでもこなしていたルシエの手は、お世辞にもきれいとは言い難かった。
 爪は割れていたし、傷だらけでささくれをたくさんこしらえていた。
 それはルシエが一人前の渡り風の証。
 今は違う。白く整えられた手は人形の証であった。
「少々部屋の模様替えをいたしましたので、お気を付けて」
「ん…。ん、…!え、ああ?」
 主寝室に足を踏み入れた人形は素っ頓狂な声を上げて、じりと後退る。
「な。なにこれ。ツィーツェ!?」
「何と申しましても。南方風初夏の装い、森の香りのそばに。といった感じです」
「森。森でしょう。これっ。なんなのこの室内植物、それに蔓草のごとき薄布の山っ」
「……お気に召しませんか?」
「むり。むりだって。こんなのエルシェリタが見たら、変なこと考える」
「変なことですか?ルシエ。それはどういったことでしょう」
「……ひぇッ」
 満面の笑みをうかべた第1王子は、寝台の上に人形をずるずると引きずり込んで、綿ではなく水を詰めた寝台の感触を楽しむようにやや体を弾ませた。
 模様替えを伝えたところ、こちらに来ると連絡を受けていた花青官らは、主人の意を速やかに汲んでわずかに灯りを落とす。
「たまにはこういうのも気分が変わって良いですね」
「ありがとうございます」
 第1王子は模様替えした部屋をたいへん気に入ったようで、天井から下げた薄布を人形に肌に巻き付けたり、室内植物に変化の術をかけたりといろいろ活用してくれたのだが、あんまりにも利用度が極端に高かったせいで、一晩の幻と消えることになった。
 が、これに花青官たちが懲りることはない。
「予算に余りが出ました」
「それでは、…!」
 花青官たちは今日も生き生きと働く。
 人形と主人の幸いが、彼らの喜びである。
 人形に言わせればそれには少々行き違いがあるが、ともかく、彼らのおかげで一の宮がまわっているのもまた事実であった。

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andante -唄う花- 27話,拍手御礼UP


なにが可愛い格好いいと見るのは、人によって違うわけで。
ただ、だいたいの人はそのピンを見て、おののく気がします。


えー…前回の更新では誠に失礼をしました。
記憶から抹消したい感じですが、更新の度にじくじく胸が疼いてはあれなので、あえて話題に出してみたりです。効果があるかは不明。
翌日動揺が響いたか(たぶんただの寝不足で)道ですっ転びました。
くぼみにつまづいて、ばーんと。ちょこっとだけ膝小僧をすりむき、ジーンズに穴があきました…。年に数度は派手に転んでいる気がします。

今回御礼は唄う花より。ここのところ御礼はすべて唄う花なので、そろそろ違うのが良いなとも思っていますが、つい。今回は静かなる?戦いの模様です。


拍手、メールありがとうございます。返信不要の方もありがとうございます。いつもありがたく読ませていただいております。


   

訪問ありがとうございます。
月吹く風の設定を気に入っていただけましたようで、たいへん嬉しく思います。思う存分趣味に走った設定ですが、花珠にまつわる話は自分の中の王道のひとつですので、それを楽しく読んでいただければこれほど嬉しいことはありません。
これからもエルシェリタのある意味わがままっぷりとルシエを楽しんでいたければ幸いです。メールありがとうございました。